私(西野鉄郎)は高校生に英語を教えています。N(西野作蔵)君は私の塾のOBです。上智大学の2年生で、ロシア語を専攻しています。帰省中の冬休みのある日、私たちは茶房古九谷(九谷焼美術館内)で会いました。話は弾み、3日連続で、「織田信長と古九谷」について話し合いました。

正義は我にあり

N:政治家として信長教ゆえに、信長の残虐性は起きるのですか?

私:比叡山焼き討ちでも、一向一揆との決戦でも、信長は死者への鎮魂のために何かをしただろうか? 怨霊が祟り、疫病や天災が起きるとも信長は思わないし、それを封じようとも信長はしない。なぜなら正義は我にあるからだ。それを一神教というし、信長教ともいう。信長の残虐性は一神教であるがゆえに生まれるのだ。

N:正義は我にあると信長は信じる。だから敵を殺すのも正義であるし、何人殺そうが、悩まないのですね。

私:一神教の「正義」の話はわれわれには重い。われわれはつねに迷いながら生きているからだ。しかし信長には生き方においても迷いがないし、決断においても迷いがない。

N:自分を徹底的に信じていたのでしょうね。自分のなかに「神」がいたのでしょうか?

私:生きるとは? 偉人は自己重要感を高める術を持っている。信長は、毎日、毎日の戦争のなかでそれを高めたのだろう。

信長は「タイムマシーン経営」で朝鮮、中国を目指した

N:長くなりましたが、今日の最後に、信長が本能寺で死ななくて生きていたら? それを語ってもらえませんか?

私:信長のキリスト教との関係は、孫氏の「タイムマシーン経営」であったろう。タイムマシーン経営とはアメリカと日本のタイムラグを利用する経営手法で、アメリカで成功したWebサービスやビジネスモデルを、即座に日本国内で展開し、大きな先行者利益を得る経営手法。ヤフー・ジャパンやアイフォンがその成功例だ。

N:信長はキリスト教にアンテナを張りタイムマシーン経営を実践したのでしょうか?

私:信長はタイムマシーン経営で朝鮮、中国への侵攻を考えた。タイムマシーン経営で信長はフロイスに訊いた。「中国への布教はどうなっているのか?」。

N:中国にはキリスト教が伝わっていませんよね?

私:ということは中国には鉄砲はない!

N:そこかあ。

私:フロイスの戦略をコピペして、宗教を利用して信長は「平和裏」に朝鮮、中国への侵攻を企てた。

N:秀吉とは大違いですね。

私:信長33歳「天下布武」をぶち上げる。「比叡山焼き討ち」を経て、「天下布武」そのものの意味が変わり始める。

N:どう変わり始めたのでしょう?

私:「日本」や「京都」の「天下」から、「世界」の「天下」へと変わり始めた。「天下布武」もおのずと成長して、信長は「アジアのローマ」を夢見るようになったのだ。しかし、残念ながら「信長教」の全貌を知ることはできない。「信長教」を作り上げる準備段階で信長は死んでしまったから。作蔵君、今日はここまでにしよう。また明日、昼の1時半、ここでってことで。

N:ありがとうございました。また明日お願いします。
 

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。