「周りを調べるなんて、へ、へへ……。危ないぜ」

「盛江君」沼田の表情が凍りついた。

「な、何しろ原始時代だからな。へ、へ。恐竜なんかがいたりして、く、喰われたり……っ。へ、へへ――……。ダーッハッハハッハハハハ……」

盛江はせきを切ったように笑い出し、音を立てて床に倒れると、エビぞりになって苦しがった。

「誰か、水を!」林が叫んだ。

川田が土間にあった防火バケツの水をもえの頭にぶちまけた。大口を開けて笑っていた盛江は、大量の水を飲まされ激しく咳込んだ。やがて落ち着きを取り戻すと、目を開いたままぐったりとなった。木崎が奥から毛布を持ってきて被せた。座は消沈した。

「不安になる気持ちは分かる。俺だって怖い」早坂は盛江に眼差しを向けて言った。「でも勇気をもって臨まなくては。そのためにも調査は必要だ」

「ちょっと言わせて」林が口を挟んだ。「何も分からない状況なので、いろいろ知りたいとは思うけど、キャンプ場以外の場所を調べるより先に、安全が第一だと思う」

「私もそう思うわ」泉が発言した。「今の状態ではキャ ンプを中止して帰ることもできない。しかも、この状況がいつまで続くのか……。はっきりいって遭難に等しいわ。とにかく、救援を待つにしても、自力で笹見平から下りるにしても、現状の安全を確保する必要があると思うの」

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。