だが……それは本当だろうか
急に思い立った自分は
つい最近の日記を持ち出して読み返し
膝から落ちそうになるくらい愕然とした

最近の文章でも稚拙さは基本的に変わらないのだ
そればかりか
数か月前まで顔を合わせていた人々に対する追慕
や四六時中使っていた電子デバイスへの欲求と
それが使えない喪失感が
身体の大切な部分を切断した後の動脈流のように溢れ
その汚れた液体のみで固めたようなこの文章の塊は何か!

人の現在の視界や意識には
実際には多くの見えていない死角があり
何かしらの歪みや偏見がある

一日として
ネット上で誰も炎上しない日はないという
最近の世相を見ても明らかだが
現在の自分を棚に上げて
他人や過去の自分を非難するのはあまりにも簡単だ
しかし
自分自身の現在の内面世界もまた
実はかなりいびつに歪んだ世界で構成されている

これは哀しいことだし
直視し難いことに違いないのだが
おそらく人は
これを自覚し始めて
やっとほんの少しだけまともになる

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『静寂の梢』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。