そのときの祖父は、物怖じせず凜としていて落ち着いていた。そんな祖父を見て強くて頼りになる強い人だと思った。

攻撃は一時間ばかり続いた。音がやっと途切れてきた。

元の静けさに戻った。祖父が、防空壕から外に出て様子を見に行った。

「もう大丈夫のようだ。この辺りに落ちなくて良かった。寒いから家の中へ入ろう」と声をかけた。みんな無言で恐る恐る防空壕から出て部屋に戻った。私は不安で朝まで寝られなかった。

翌朝、情報通の祖父から聞いた。「自宅から北の方にある巴川付近の軍事工場や日本平にある軍の施設を狙って御前崎南方海上の太平洋から艦砲射撃をしてきたようだ」と説明してくれた。

自宅に爆弾が落ちてこなくて本当に良かったと思った。静岡に疎開し初めて体験した攻撃の怖さは、一番身にしみて忘れられない想い出となった。

そして、その一カ月後、今度は、もっと恐ろしい攻撃に遭遇した。二度目の攻撃も真夜中だった。

突然。裏の家主の伊藤さんが、「棚橋さん! 空襲ですよ! 早く起きてください! うちの防空壕に来てください」と大声で叫んだ。祖父が声をあげた。

「みんな起きろ! 今度は、空襲のようだ!」

家族全員が飛び起きた。祖父が裏木戸を開けた。外は真っ暗なはずなのに昼のように明るかった。

注一:「艦砲射撃」  海上から軍艦に搭載された大砲で、陸地にある軍事施設や軍事工場を目標に弾丸を発射し攻撃すること。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『戦争を知らない君へ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。