木戸から防空壕まで三メートルくらいあった。また「シュルシュルシュル」とより大きな音がして砲弾が屋根の上を通過し、「ドド~ン」と遠くで爆発して地響きが起こった。

外で聞くとその音はとても大きかった。僕は「キャァ~」と大きな悲鳴を上げ母にしがみついた。

母に抱かれていた妹(一歳)も泣き出した。祖父が防空壕の入り口のむしろを開けた。

「足下に気を付けて落ち着いて入りなさい」と指示をした。母の後ろについて、生まれて初めて自宅の縁の下の防空壕に入った。

防空壕は、縁の下の土を二メートルくらい掘った三平方メートルくらいの簡単なものだった。今から思えば爆弾や焼夷弾が落ちれば何の役にも立たない防空壕だったろう。

閉鎖された空間に入ると助かるかもしれないという安心感を感じた。中は真っ暗で恐かった。

祖父が入ってきて防空壕の柱に懐中電灯をぶら下げ明るくしてくれた。明るさも安心を与えた。

祖母が各人の毛布を持って最後に入ってきた。そして、懐から哺乳瓶を取り出して母に渡した。泣いていた妹に飲ませた。

妹はすぐに泣きやんだ。非常のときでも祖母の家族への気配りや思いやりは変わらなかった。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『戦争を知らない君へ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。