「はい」と、か細い声で優子は答えた。

柚木はまたドキッとしたが、表情に出さないよう、心を落ち着かせた。

「お勤めをなさっているんですか?」
「いいえ。お勤めはした事がありません。家でいけばな教室をしています」
「いけばなを?」
「はい。お花が好きなので。それに、私、あまり社交的じゃないので、お勤めしようと思えなくて」

柚木は顎に左手をあて、何か考えている様子だった。

「お父さんを亡くされ、お母さんとお二人で、これから、どうされるおつもりですか?」

「わかりません。ただ、生徒さんから電話があって、皆さん、私が落ち着いたら、嵯峨御流のお花を続けたいって言って下さっているので、細々とですが、教室を続けたいと思っています。私から花をとったら、何もありませんし……」と、優子は静かに言った。

「今はどんなお気持ちですか? 無理はしないで、話して下さい」

「悲しいです。……苦しいです。……不安です。……胸がつまって、何て言ったらいいのか……よくわかりません」と、優子は途切れ途切れに言った。

※本記事は、2020年4月刊行の書籍『追憶の光』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。