くすりの温泉とアイヌに呼ばれし褐色の
かけ流し湯のいたく眼に沁む
火の山に出でし効き湯にいくたびも
ひたりて足の生傷いやす
崖急に落ちゆく摩周湖霧ふかし
なにも見えねど鴉の声す
※本記事は、2019年9月刊行の書籍『歌集 秋津島逍遥』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。
歌集 秋津島逍遥【第16回】
“忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す”
――日本の面白さに旅装を解く暇もない
最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。
尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。
くすりの温泉とアイヌに呼ばれし褐色の
かけ流し湯のいたく眼に沁む
火の山に出でし効き湯にいくたびも
ひたりて足の生傷いやす
崖急に落ちゆく摩周湖霧ふかし
なにも見えねど鴉の声す