老人の話が終わると、後ろから剛田タカシが

「うらなり、お前ここに来てしまったのか」 と、話しかけてきた。剛田は僕と同じ高校で、いつも僕の持ち物を勝手に取って隠したりして、いじめてくる大男である。

「残念だなあ、兵隊は楽に金を稼げるから、うらなりには知られたくなかったんだよなあ」

僕が剛田にそれはどういうことかを聞くと、彼は、今までのことを話してくれた……。

実は、一年前に僕は悪魔に襲われたらしい。その悪魔の能力は鉄だったらしく、とっさに僕が近くにあった鉄パイプで殴ったが、びくともしなかったという。そこに剛田が助けに来てくれて、戦ってくれたのだが、彼が悪魔を殴っただけで悪魔は粉々になってしまった。剛田が悪魔を火で燃やしながら「こうしないと悪魔は死なないんだ」と言った。

僕が何で剛田がそんなに強いのか聞くと、剛田は光のことを話してくれた。僕はすぐに一般人が知らない光を簡単に話してくれたことに疑問を感じ、彼の目を盗んで、今まであったことを紙に書いた。それで、記憶を消されても、剛田が光を使えることを知ってしまったのだ。

それから僕が真相に近づくたびに記憶を消され、剛田に七回も記憶を消された。そして、ついに彼は僕の家に上がり込んで、隠してあった紙切れを全部取り上げたのだった。しかし、一枚の紙きれを見逃してしまい、それが、光山のことが書いてあった紙だったのだ。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『令和晩年』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。