ある日、いつもの通学グループに出くわした。そのうちの一人が通せんぼをした。

急ブレーキをかけた。

「おい棚橋。自転車も持っていたのか。俺たちも乗せろよ」
と言ってきた。

「いやだっ!」
と拒否すると

「ランドセルや自転車は、お前しか持ってないんだ。自転車くらい貸したらどうだ」
と詰め寄られた。自転車から降りてハンドルを持って引き返そうとしたが、上級生に力づくで自転車を奪われた。

「自転車を返せ!」
と叫んで追いかけたが聞き入れられずグループに乗っ取られた。

自転車に乗ったことがない連中だったので誰もうまく乗れなかった。頭にきたのか、

「こんな乗れない自転車。いらないわ」
と言って、急な坂の下の田んぼへ自転車を放り投げられた。

「何でそんなことするんや」
と泣いてくってかかったが、彼らは、ふざけて逃げて帰った。

急な傾斜地の下なので子供では自転車を引き上げることはできなかった。

悔しくて情けなくて一人でシクシク泣きながら自宅に戻った。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『戦争を知らない君へ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。