関西弁を聞くのが初めての子供たちばかりだった。

「君の名前は、何だっけ?」
「たなはし まさおや」
「家の住所は?」
「まだ、よう覚えてへんわ」と答えた。

一言言うたびに、みんなゲラゲラと笑った。「兄妹はいるの?」と聞いてきた。

あえて関西弁を喋らせようとする意地悪な質問だと思った。馬鹿にされているように思い腹が立った。

「もう、あんたらには、もの言わへんわ」と強く言い返した。「こいつ、生意気や! 一人だけランドセルなんか持ちやがって」と上級生らしき生徒がランドセルの上に鉛筆削りの小刀を突き刺し斜めにひっかいた。

「なにするねん。やめてくれ」と言い返し睨み付けた。すると他の子が、ランドセルごと両手で強く押した。

突き飛ばされて前のめりになり地面にうつぶせに倒れた。みんなは見て見ぬふりをして嘲笑いながら行き過ぎていった。

おでこと両膝から血が滲んだ。「何で初日からこんな目に遭わされるんや」悔しくて情けなくて起き上がりながら彼らを睨み付けて泣いていた。

「ちくしょう。あいつらに負けてたまるか」と歯を食いしばり一人で学校の門をくぐった。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『戦争を知らない君へ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。