生徒は、自分に集中できるようになると、今度は最も重要な感情の一つ、恐怖心への対処法を学ぶ。

怪我への恐れは、誰もが持つ感情である。しかし、ここでの秘訣は、恐怖心を持たないようにするのではなく、その感情を上手く活用し不注意な行動を避けることにある。スパーリングの数をこなしていけば、大きな恐怖を感じることも少なくなるだろう。

相手との対戦で恐怖心を持たないと、自分のスキルを過信してしまい、逆に敗戦や負傷につながる。だが、スパーリングでの最初の恐怖を克服することは、生徒に自尊心と勇気を与えてくれる。これを実生活にも適用すれば、生徒はスパーリングを通じて自立心を養い、必要な対決で一歩も引かず、そして余計な対決からは立ち去る自信を持つことができる。

スパーリングは、自分とパートナーが持つべき本来の繋がりも教えてくれる。相手を同じ人間だと認識し、繋がりを深められれば、その相手を傷つける事をためらうようになる。

スパーリングにおいて、生徒は二人で一つの関係を作り出す。つまり、彼らは一体となり、陰陽の動きを表すのだ。スパーリング中、内面に生み出される恐怖心と自信は均衡に保たれている。

そしてこの二つの割合は、攻撃と守備を交互に実践していくうちに変化し、全体的に釣り合いの取れた状態となる。一方が心を支配する場合もあるが、この二つの変動は、生徒が成功するために必要不可欠なものである。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『人の道 伝統的テコンドーの解釈』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。