▼孤独は健康障害を引き起こす

問題なのは、孤独という状態が、相当な健康障害を引き起こす可能性があることです。

孤独とは、客観的にみると社会集団の中で周囲から隔離された状態に近く、一般には心身にストレスが生じる状況なのです。医学的には自律神経の交感神経と副交感神経のバランスを崩し、ストレスホルモンなどが上昇し、免疫作用を低下させます

イライラ、不眠、便秘、冷え、血圧の上昇などの症状の悪化を招くのです。食べ過ぎ、 運動不足、飲み過ぎ、喫煙、夜更かしなどと共通するストレス機序が働いています。それどころか最近の研究で、孤独が運動不足、飲み過ぎや喫煙よりも健康障害リスクが同等以上と言うのですから、大ゴトです。

ここ数年の間に、世界中で孤独と健康被害に関するニュースが相次いで報道されました。

まず、2014年の米国学会で発表されたのは、孤独が早期死亡を50パーセント増加させ、その孤独による早死が肥満の2倍に相当するリスクがあることです(カシオッポ J、アメリカ科学振興協会)。

さらに2017年には、これまで発表された世界中の無数の論文を解析した結果、孤独による死亡リスクは、●アルコール依存症と同等、●毎日15本の喫煙と同等、●運動不足よりも大きい、さらに先の2014年に発表されていた、●肥満の2倍のリスクも改めて評価され、報告されたのでした(ホルト-ランスタッドJ、アメリカ心理学会)。

孤独が、飲み過ぎや喫煙と同等で運動不足よりリスクが高く、さらに肥満の2倍のリスクがあることになれば、アルコール依存症だけでなく、高血圧、糖尿病、心臓病や肺の病気などの生活習慣病に匹敵するか、またはそれ以上の高いリスクで健康障害を引き起こすことになります。

なんという衝撃的な報告でしょうか。

同じ2017年、今度は米国の前公衆衛生局長官が「中年男性がいま直面する最大の脅威は喫煙や肥満ではなく、孤独だ」などの内容を公表し、翌2018年には、英国から「孤独担当大臣」の新設が発表されたのです。

英国は、特に「孤独がアルコール依存症、薬物依存症やうつ病などの病気のリスクを高める」ことや「男性が孤独の犠牲者になりやすい」として、10年ほど前から本腰を入れて対策に取り組んでいます。

孤独な人の身の回りの世話や話し相手になるソーシャルワーカーなどの組織、24時間365日の電話相談サービス、男性だけのDIY房や「歩くサッカー」(身体に負担の少ない走らないサッカー)教室などが既に数多く存在しています(岡本純子『世界一孤独な日本のオジサン』角川新書 2018年)。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『ストップthe熟年離婚』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。