第二章 伝統的テコンドーの三つの要素

組手(テリョン)

フリースパーリング(チャユ・テリョン)

ノーコンタクト・スパーリングの動きは、パートナーとダンスをするようなイメージで、両者とも流れに乗って行う必要がある。そうすれば、互いに手足をぶつけたりすることもないだろう。もしこの方法でスパーリングができれば、それは力よりも知力とスキルの比べ合いとなる。

知恵で出しぬき、技術で相手を凌ぐこの方法は、体、心、精神を使う以外ではチェスと照らし合わす事ができる。この点に関してスパーリングは、ステップスパーリングとよく似ている。

ただしこの場合、攻撃、守備、反撃が絶えず行われる。攻撃の受け方は同じ四つの技(ブロッキング、ダッキング、カウンターアタック、相手の力を利用して相手を制するもの)であるが、攻撃の数と種類は事前に知らされていないし、決められてもいない。一つひとつの動きが瞬時に行われるため、次の動きを考える余裕もない。

最初の頃は、技を正しく的確に当てるのは難しい。練習を重ねていくうちに相手の隙を見抜けるようになり、動作パターン、攻撃、守備の好みが分かるようになっていく。スパーリングパートナーが自分の意図をうまく隠せない場合、熟練した選手なら、そのパートナーの動きを素早く読み取って優位に立ち回ってくるだろう。ただしそうした知識に加えて、 タイミング、スピード、正しい技の選択がスパーリングの要となる。

スパーリングにおいて、最も隙を作りやすいのは攻撃の瞬間である。初心者は、自分の攻撃に集中しすぎるあまり防御を忘れてしまいがちである。これでは攻撃の姿勢を構えているうちに、相手に反撃の隙を与えてしまう。

しかし経験を重ねていくうちに、生徒は相手に隙を作らせるため、フェイント攻撃をしかけたり、相手を惑わせたりできるようになる。そしてこの経験は、人生のあらゆる側面で実用できるようになる。

しかし、自分のアプローチに自信を持ちすぎると、かえって相手に反撃されやすくなる。自信過剰は、生徒にとって破滅のもとだ。スパーリングでは自信を抑制し、適時にそれを使い分ける方法を身に付けていく。適切なタイミングを計ることは、一般的に、スパーリングにも人生にも最も重要な側面である。

自分の動きに対する相手の反応を知ることは、素晴らしい訓練の一つである。また、その知識を日常生活にも実用できれば、行動よりも対話を通じて問題解決できるようになるだろう。

こう考えてみてほしい。もし私の意見が他者と対立し、私が単純に自分の意見を正しいと主張すれば、私の見解を相手に理解してもらうことは難しいだろう。反対に、正しい論点で、適切なタイミングを計り、適切な言葉で相手に伝えることができれば、相手 を説得できる可能性は高くなる。

さらに、もし一つのアプローチが好ましい結果に繋がらなかった場合でも、同じ議論を繰り返すのを止め、新しいアプローチ法を見つければよい。議論とはつまりメンタル・スパーリングである。自分の目的を達成するため、「自分の考えを検討してほしい」と相手を説得し、警戒心を緩めさせる。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『人の道 伝統的テコンドーの解釈』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。