くっきりと爪のかたちをとどめたり
獣の姿を考えてゐる
春近くむれる牡鹿ら足爪に
雪かき分けて笹の葉を食む
人をらぬ野に牛むれて草を食む
果てしなき野を過りてゆけり
※本記事は、2019年9月刊行の書籍『歌集 秋津島逍遥』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。
歌集 秋津島逍遥【第12回】
“忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す”
――日本の面白さに旅装を解く暇もない
最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。
尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。
くっきりと爪のかたちをとどめたり
獣の姿を考えてゐる
春近くむれる牡鹿ら足爪に
雪かき分けて笹の葉を食む
人をらぬ野に牛むれて草を食む
果てしなき野を過りてゆけり
根釧原野 根釧原野は東は根室海峡に、南は太平洋に面した広大な台地で酪農が盛ん。根室海峡に突き出た野付半島の原生花園でははまなすが群生し、野付湾では海豹(あざらし)を見ることができる。