彼女にあっては「諸行無常」とは滞りのない生命の流れ、その多様な変化の様を指すので、「草木の発芽も、温かい太陽の照ることも、赤坊の誕生も、人間の立身出世も国運の発展も亦諸行無常の一部である」とされる(『花薬欄』)。

無常の相の中にあるからこそ「風もなきにざっくりと牡丹くずれたりざっくりくずるる時の来りて」(歌集『浴身』⑦第八巻所収)の歌に示された絢爛な滅びの美も生まれる。

「死ぬことも無常の一現象である以上、永久に死に続けることのあるはずがない。必ず死なる形式は又変じて何等かの生なる現象に変化するであろう」(『花薬欄』)。それをかの子は「仏教で説くところの『生々世々業転(しょうじょうせぜごうてん)の説』と呼んでいい」とする(『人生論』⑦第十巻)。

※本記事は、2019年1月刊行の書籍『オールガイド 日本人と死生観』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。