Chapter1 天変地異

笹見平のキャンプ場を夜が覆い尽くし、全員が寝静まった頃。林は今まで体験したことの無い強烈な衝撃に目を覚ました。

轟音のち、激震。――爆発か? 地震か?

突然の事態に夢かうつつか分からず、声も出なかった。ふと閃光が走り、藁の隙間から強く差し込んだ。住居の中にいながら視界が真っ白になった。

「わわわわ……っ!」

再び天地がひっくり返るように揺れた。林の身体は投げ出されるように吹っ飛ばされた。揺れは五秒たらずで収まった。再び、嘘のように静かな夜が戻ってきた。

「痛……」

林は上体を起こした。肩と腰がズキズキする。周りを見ると、自分の身体が寝床から三メートルは離れた土間にあることに気付いた。

「おい、林」

副リーダーの一人・盛江直生(もりえすなお)の声がした。

「ああ……、うん」

声を絞り出す。爆音で耳がおかしくなって、自分の声が籠って聞こえる。

「今のは一体何だ? 一瞬身体が宙に浮いたぞ」
「ぼくなんか土間まで吹っ飛ばされた……。他のみんなは大丈夫?」
「うん」
「なんとか」
「大丈夫だよ」

何人かが苦しげに応えた。

「今のは何だったんだ?」
「夢か?」
「幻か?」
「この世が終わったかと思ったぞ」

男子大学生たちは一斉に声を発した。かしましくしゃべっていると、にわかに闇の一角に白い光の輪ができた。

副リーダーの一人・早坂雷(はやさからい)が、手持ちのLEDライトを自分の顔にかざしたのだ。下から照らされた早坂の表情は恐怖にひきつっていたが、目は死んでいなかった。