第五章 姿勢を正す

一に姿勢、二に運動、三、四がなくて、五に治療

なんだかんだ言っても、長生きをしている人は、あまりいいものを食べていない。すごいサプリメントを飲んだから長生きできた、なんて話も聞いたことがない。健康は食事だけの問題じゃない。私は、「一に姿勢、二に運動、三、四がなくて、五に治療」と教えている。三は食事、四はサプリメント系を摂ることを暗に伝えているのだが、食べ物があふれまくっている現代には、いらないことだ。だから三、四を飛ばして治療。だから「治療したから治してやったぞ」とは、私は必ずしも思わない。「治療に至らずに治さないといけない」というのが私の考えだが、生活もある、経済原理は、やっぱり大事じゃけん。

自分の姿勢を知ろう

姿見(鏡)の前に立って、自分の姿勢を知ろう。顔は見なくてもいい、姿見の前で足を揃えて立ってみる。そうすると、自分の体が、いかに歪(ゆが)んで曲がっているのかが分かる。自分では真っすぐきれいな姿勢を取っているつもりでも、正面から見ると、足はよそを向いていたりする。

歪みやねじれを実感することで、「姿勢を良くするにはどうしたらいいか」「使っていなかった筋肉を使う習慣を、どう身につけるか」などを一緒に考える。治療ではまず、患者に、いい姿勢を確認させて、一番いい姿勢のときにコルセットを装着する。コルセットは、着けた瞬間を維持する道具。歪んだ状態で着けてしまうと、歪んだままの状態であって、気持ちはいいかもしれないが、治療効果はゼロだ。

テレビやネット通販などの「曲げ伸ばし楽々」などという宣伝文句を信じるあまり、つい買ってしまう腰や膝(ひざ)のサポーターなどがあるが、あれは根本的に全部よくない。仕事で使う人には問題ないが、年寄りなんかが使うと逆効果だ。悪い姿勢のまま動きやすくさせてしまうのだ。

膝のサポーターなんかで膝が曲がりやすいということは、反面、膝が伸びなくなり、膝を曲げて歩くようになってしまい、どんどん歪んでしまう。腰のコルセットにも同じようなことがいえる。背中が曲がってしまうのだ。それらしいフレーズをたくさん耳にすることが多いが、注意が必要だ。

治るための痛みがある

歪みやねじれに伴う痛みは、いい姿勢をしっかり取ることで消える。そのためには大きなハードルがあって、どうしても最初に痛みがくる。患者には「痛みが出ることはいいことだ」と説明はするが、患者は痛みを取ったり和らげたりすることが病院の治療だと考えている。しかし、根本から治すためには「治るための痛みは出さないといかん」と話す。必要なときは、その痛みに対して痛み止めを使うこともあるが、「痛みが出ることはいいことだ、治るための痛みだ」と強調している。

※本記事は、2019年10月刊行の書籍『治療の痛みは喜びの涙 ある整形外科医の言いたい放題』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。