N:え! 火薬ではないのですか?

:違う。金銀を贋金で買う。その贋金で買った金銀で信長は火薬を買う。一方信玄や謙信は本物の金銀で明銭の「永楽通宝」と火薬を買う。

N:西国大名は娘50人と火薬1樽とを交換したのでしょう? 早い話が人身売買をして火薬を手にいれてきたわけでしょう。しかし、信長は娘を売り飛ばさず、贋金をつくり、贋金で金銀を買い、その金銀で火薬を買うわけでしょう。なんかすごいなあ。

フロイス

(1)富の源泉としての漆

私:さてここからはカトリックのルイス・フロイスを語ろう。フロイスが信長に大きく貢献したことを時間を割いて論じてみよう。

N:フロイスは信長にいったい何を与えたのですか?

:まず「南蛮漆器」の輸出先だな。南蛮漆器とは南蛮向けの漆器のことで、聖祭具やヨーロッパの王族間の贈答品に使われた。技法は蒔絵と螺鈿で、金銀、貝、花樹や鳥獣の文様がある。売れ筋は洋櫃と小箪笥だった。

N:漆器が「ジャパン」と呼ばれるのは、ここからですか?

:マリア・テレジアとその子マリー・アントワネットが熱狂的なコレクターだった18世紀からだな。ところで明治初期の話だが、日本の漆で儲けて石油メジャーの礎を築いた人物がいる。漆はそれほど儲かるんだ。ロイヤル・ダッチ・シェルのマーカスだ。時は明治初期の文明開化の世。浜は古い「文明」のゴミの山だ。硯と硯箱は、明治の世は筆では字は書かないので、海岸に溢れていた。その硯箱は漆塗りで、ヨーロッパではシガレット置きに化けたのだ。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。