二つの真実

その1

次の日曜日、待ち合わせ場所のMacに十時五十分に着いた。しかし十分前だというのに誰もいなかった。仕方なくスマホで

「いまみんなどこにいる?」と連絡した。

「待ち合わせ場所だよ」
「待ち合わせ場所はどこ?」
「大宮駅の中にあるMac」
「わかった。今行くね」

僕は待ち合わせ場所に着いたが、A君がいない。時間になっても来ないので仕方なく出発した。大会の受付は十二時であるからまだまだ余裕である。電車に乗っている間、A君から電話がかかってきた。電車の中なのであまり大きな声が出せない。電話を切ると上杉君が

「どうしたの?」と聞いてきた。

「A君まだ大宮駅にいるって」
「間に合うかなあ」
「いまこっちに向かっていると思うよ」

内宿駅に着き、そこから歩いて会場まで行った。A君は三分遅れて来たがなんとか間に合った。将棋の大会が始まった。大会はC級、B級、A級とあって、最初はC級で、そこで三回戦って全勝したら次の大会はB級で戦うのだ。B級ではC級より強い人に五勝したらA級に上がれるが、三敗したらC級に戻ってしまう。僕の対戦相手は三人とも振り飛車だったが、あまり定跡を知らないらしく、簡単に勝ってしまった。こうして大会は次にB級に挑戦できる資格を取って終わった。