・目的、対象疾患:

  1. 脳梗塞に関連することとして、頸部や脳の血管が細くなったり、詰まっている箇所がないかを調べる。
  2. クモ膜下出血や脳内出血に関連することとして、血管に瘤(こぶ)(動脈瘤)や血管のかたまりなどの奇形がないかを調べる。
  3. 脳腫瘍に関連することとして、腫瘍を養っている栄養血管がどのように入っているかを調べる。
  4. 必要があれば、その他の開頭手術や穿頭術に先だって血管の状態を調べる。

・方法:大腿(通常は右側)の付け根(鼠径部)で動脈の触れるところを局所麻酔し、動脈内に細い管(カテーテル)を挿入して、レントゲン透視によりカテーテルを脳に向かう頸動脈や頭蓋内動脈まで進めます。目的の部位まで進めたら、カテーテルから 造影剤を注入し、レントゲン撮影をして血管を写し出します。

動脈硬化の強い人で、血管が非常に強く屈曲しているため右大腿からカテーテルを進められない場合には、左大腿や腕の動脈からカテーテルを挿入することもあります。

動脈内に造影剤を注入するときに、その動脈領域、例えば眼の奥、口や顎、顔面などに数秒間の熱感を伴うことがありますが、心配ありません。検査時間は通常1時間前後ですが、血管をより詳しく調べたり、血管内治療を行ったりする場合にはさらに時間がかかります。

検査が終了したときにすぐにカテーテルを抜きますが、カテーテル挿入部の動脈からの出血を防止するため、終了後から約6時間大腿のカテーテルの挿入部を絆創膏や砂袋で圧迫し、ベッド上で安静にして、下肢を動かさない状態にしていただきます。

[図4]左内頸動脈の動脈瘤(矢印)の脳血管撮影像 左図:通常のDSA写真、右図:立体(三次元合成)像

・合併症:この検査による危険率(合併症の起こる可能性)は0.1〜1%程度ですが、重篤な合併症には次のようなことが挙げられます。

  1. 検査が原因で脳梗塞が生じることが報告されています。検査中、カテーテルの壁に血栓ができたり、既存の血栓がカテーテル操作で剥離したりして、これが脳の血管に詰まることによります。その結果、手足の麻痺、失語 (運動性失語:言葉が言えなくなること、感覚性失語: 相手の言葉の意味が分からなくなること)、失明、認知症、意識障害などを生じます。これらは一過性(一時的)であることが多いですが、後遺症として残る場合もあります。
  2. 造影剤アレルギーによって蕁麻疹を生じることがあります。ショック状態(血圧が下がったり、心臓の調子が悪くなったりすること)となった場合、死亡を含む重篤な状態になることが報告されています。
  3. 検査中に脳動脈瘤が再破裂したり、脳内出血を起こしたりすることが稀にあります。
  4. カテーテルの挿入部(動脈穿刺部)より末梢側の足先に血液が行きにくくなり壊死に陥ることが稀にあります。
  5. 動脈穿刺部に皮下出血を生じると、その範囲にもよりますが、吸収されるまでに1〜2週間を要する場合があります。
  6. ごく稀(0.1%)な合併症として肺塞栓症、コレステロール塞栓症、腎不全、穿刺部仮性動脈瘤、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)などが報告されています。
※本記事は、2020年1月刊行の書籍『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法 』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。