第1章  夫婦の問題

(6)世界一家事・育児、そして介護を分担しない夫​

▼親の主な介護は女性

日本では、長い間親の介護は同居している女性が中心になって担ってきました。三世代が一緒に暮らしていれば家族で助け合って介護も十分可能だったわけです。

ところが、核家族化が進み、未婚化や少子高齢化で単身高齢者世帯が増加の一途をたどっています。同居家族の介護者も高齢化しているのです。2005年に65歳以上の人口比率が世界一となり、その後も急速に高齢化社会が拡大しています。もはや家族だけで介護を担うことは極めて困難な状況になったのです。

そこで社会全体で介護負担を支え合う仕組みとして2000年に介護保険制度が誕生しました。私自身も2011年より介護保険制度のもと、在宅訪問医療の担当医として、家族の介護負担を軽減し、実りある日々の生活を実現すべく医療支援をしてまいりました。

しかし、女性の介護負担が徐々に軽減傾向にあるとはいえ、今なお家庭内の主たる介護者は女性なのです。同居している男女で誰が主な介護役割を担うかを調査した結果(厚生労働省、2017年)、実に7割余りを女性が担っていました。女性の中で、要介護者の配偶者である場合が36パーセント、その子どもの場合が21パーセント、子どもの配偶者の場合が10パーセント、残りがその他の親族となっています。男性では、配偶者の場合が15パーセント、子どもの配偶者の場合が11パーセントとなり、ほぼこの両者だけで男性全体を占めています。

社会的にも問題になるのは、介護のために仕事との両立が困難となり、離職者が出ることです。女性では無職や非正規雇用者で、男性でも非正規雇用者で主な介護者になることが多いのですが、一方で介護のために離職せざるを得ない人が現実に大勢います。貴重な労働力が縮小するのですから社会問題です。

男女とも介護開始直前まで、フルタイムの正規雇用者である場合が少なくありません。この時点で責務の重い昇進などを見送る決意をしたり、もっと時間的に融通のきく部署や職種に変わったり、フルタイムから非正規雇用のパートタイムになったり、やむなく離職するなどを選択することになります。

実際、介護開始時、過去1年間で前職を離職した人が男女で約10万人いるのです(総務省統計局、2018年)。このうち女性が8割前後で男性の4倍を占めています。

いずれにしろ、家族介護者にとっては減収につながり経済的負担がこれまで以上にのしかかることになります。社会にとっては50代前後以上の熟練の労働力を失うことになるのです。在宅医療に従事する私たちにとっても常に考慮すべき課題です。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『ストップthe熟年離婚』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。