第1章 認知症の改善のために行った工夫

1 楽しいおしゃべり

楽しいおしゃべりが認知症の改善に一番効果があったと思います。毎日3時間以上母親の好きな話題でおしゃべりをするようにしました。

母親に「テレビを見ていて好きにしていていいよ」と言って、家族が一日中母親を一人にしておく状況はできるだけ避けて、家族だれかと積極的に楽しいおしゃべりをするようにしました。特に、母親の大好きな話題を持ち出しニコニコしてもらうことでした。認知症があったので同じ楽しい話題を繰り返し繰り返ししてもそのたびに喜びました。

我慢比べでこちらが諦めてはダメです。特に故郷、友達の話は大好きでした。禁句は「お母さんさっきも聞いたじゃないの? お母さんさっきも説明したよ。もう忘れたの」です。この言葉は本人のプライドを傷つける最悪の言葉で認知症を悪化させると思いました。楽しいこと、面白いことを言った時には積極的にほめました。

一日3時間以上母親とおしゃべりするのはネタがないと難しいです。第2章の8に事実から作り上げた代表的なネタの物語の例を示しました。物語は10話以上作りました。その日により、1、2話の物語を選び、その全部または一部をもとにおしゃべりしました。

2 マッサージ

楽しいおしゃべりと同じぐらい認知症の改善に役立ったのがマッサージでした。

全身の血流をよくするために手足、肩、首、背中のマッサージを毎日しました。

具体的な方法を書きます。

手足の指は一本ずつ私の手の指で、母親の指を柔らかくするように「揉みました」。手の甲と手の平、足の甲と足の裏、かかとあたりは私の手の平で「なでました」。脛(すね)は、下肢静脈瘤があり血管が紫色に浮き出て凸凹があったので、表と裏(ふくらはぎ側)を、手の平で、くるぶしあたりから膝の方に向かって、そっと「こすりました」。

当初、私はそっとこすったものの血管を傷つけてしまい、4、5回内出血をして皮膚に紫色の大きなしみができてしまいました。下肢静脈瘤を改善するのは神経を使いものすごく大変でしたが、5年ほどそっとこすっているうちになくなりました。下肢静脈瘤については第2章の6でも述べます。

下肢静脈瘤の心配がなくなった後は、脛の表と裏を、手の平で、くるぶしあたりから膝の方に向かって、こするより力を入れてなでるようにしました。毎日夕方、表と裏をそれぞれゆっくりと30回程度です。

肩、首、は手でよく揉み、背中全体は両手の手の平で腰から首に向かってゆっくりとこすったりなでたりしました。

この本では、揉む、なでる、こする、をまとめてマッサージという言葉を使っています。

なお、自分で自分自身にマッサージをしますと、肩、腕、首回りが凝ってしまい、脳への血流が悪くなる心配があります。マッサージはほかの人にしてもらうのが基本です。私が、マッサージをします、と書いているのは、子供が親に対しマッサージをすることを想定しています。

私自身は長年の経験から慣れていますので、毎日、自分自身にマッサージをしています。両足の指を揉み、8カ所の指の間をこすり、足の甲、足の裏、をなでます。

また、脛の表と裏をくるぶしあたりから膝に向かって、それぞれ50 回ほど、血液を上に流すような意識で、こすっています。手、腕は、心臓の高さからそれほど低くなく、重力で血液がたまる心配があまりないと思われるのと、毎日いろいろなことに使っていますので マッサージはしていません。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『認知症の母を支えて 103歳を元気に迎えるまでの工夫』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。