第1部 捕獲具開発

3章 仕掛けとその効果

4 餌付け機能を備えた1匹取りの仕掛け

B 捕獲例2 クマネズミの場合

集団行動について

クマネズミも、ドブネズミと同じように数回の出産で生まれた子が親と共同生活をしていると私は思っている。これは観察された事柄から自分なりに出した結論で、今では当たり前のことのように思っているのだが、どうも学者研究者たちの中にはそのことすら認めようとしない人たちがいる。

公に認められていないのだからと、簡単には認めようとしない。この観察した数年後、それを裏付けることができる面白い現場に遭遇したので、証拠の品としてその時に撮った1枚を紹介する(写真1)。

[写真1]垂れ下がった尻尾の数でおよその 個体数が分かる

新潟県にある15坪ほどの鶏舎で捕獲具のテストを行おうと2月に下見に行った時のこと。

鶏舎は床と天井がなく、骨組みがすべて確認でき、生息するクマネズミは隠れ場所がないので、構造材の隙間にいるのが丸見えであった。建物の周囲は畑が広がっていて 一面の雪景色。寒さから身を守るためか、1列の大きい塊と数匹を確認することができて、15、6匹の集団と分かった。

このような観察もめったにできるものではない。同行した人が写真として残しているが、尻尾の数を数えることで、およその個体数がわかる。クマネズミの家族そろってのスナップ写真はとても貴重である。野生のクマネズミ集団を表に出てこさせて一列に並ばせることは、不可能だからである。

これは、自立できるまで大きくなった子が親と離れずに一緒にいて集団を形成していることを立証する立派な証拠写真ではないか。

一般的に、ネズミが野生状態でどのような生活をしているかについて確認されたことはない。子は自立できるようになると親から離れて生活するのか、それとも、数回の出産で生まれた子が親と共同生活をするのか、公には確認されていないことになっている。

ネズミ算式に野ネズミの個体数が増えて大繁殖し、農作物に多大な被害を及ぼすことはが過去に何度もあった。その度に、研究者たちはそのメカニズムを解明しようとして様々な調査を行ってきた。大繁殖が起きる過程を推理する上で、前述したネズミに関する考え方は実に都合が良いのだ。

すなわち、早い時期に自立し、それぞれの個体が異なった集団の個体とペアを組んで繁殖活動を開始すると、食料が十分確保できるなら、短期間に個体数がネズミ算式に増える。実際、実験動物として飼育されているハツカネズミはそのようにして飼育し、短期間に繁殖させることによって多くの個体を実験のために供用している。

しかし、昨今の人間世界と同様、子がいつまでも親と同居しているとすると、当然繁殖の機会が減ってしまうので、大繁殖は起こりえない。子がいつまでも親と同居しているクマネズミとドブネズミでは自然状態で大繁殖することはないということになる。

大繁殖の例の多くは体の小さい野ネズミについての話なので、クマネズミとドブネズミは、時として大繁殖をする野ネズミとは違って全く別の生活様式を持っていると考えた方が良いのではないだろうか。

思っていた以上にクマネズミ社会は奥が深く、行動様式についてさらに解明することが重要になった。科学的な興味という点では面白いことこの上ない。私はクマネズミを捕獲することができたうれしさも相まって益々のめりこむようになった。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。