第1章 脳梗塞とはどのような病気か?

脳梗塞はどのようにして起こるのか?

2例目(図)は80代後半の女性。突然の意識障害と左片麻痺で発症しました。人工弁置換術を受けた既往歴があります。

左図:発症後2時間の単純CTにて、向かって左側の右半分の脳の腫れのために溝が見えなくなっています。専門的にいえば、1)右レンズ核の輪郭の不明瞭化、2)右島皮質の不明瞭化(Insular ribbonの消失)、3)右大脳半球全域における皮髄境界の不明瞭化、4)脳溝の消失(tight brain)を認めます。

中央図:MRIの拡散強調画像DWIでは、右大脳半球のほぼ全域にわたる広範な高信号域を認めます。MRA(未提示)では右内頸動脈閉塞が確認されました。

右図:発症翌日の単純CTでは、右大脳は全般にわたって著明な脳浮腫を伴う広範な低吸収域(脳梗塞)となっています。この患者さんは意識を回復することなく急性期に亡くなられました。

[図] 脳梗塞急性期のCTとMRI
左図と中央図:単純CTとMRI・DWI(拡散強調画像)(発症後2時間30 分)、
右図:単純CT(発症翌日)

以上、心原性脳塞栓の重症例ばかりの画像をお示ししましたが、他のタイプの脳梗塞も後でたくさん出てきます。また、画像診断も長足の進歩がみられています。

CTや通常のMRI撮像法(T1,T2,FLAIR)では、梗塞巣の信号変化がみられない超急性期においても拡散強調画像(diffusion weighted image:DWI)では発症後30分~1時間頃より細胞性浮腫が高信号としてあらわれます(中央図)。

どのような症状が出たら脳梗塞を疑うのか?

脳卒中全般にいえる特徴として、神経症状が突発することが挙げられます。脳梗塞では、閉塞した脳血管ごとに神経症状の出方が異なります。その血管の支配領域(栄養している領域)に応じた症状が出現するのです。

梗塞の部位や大きさにより、症候は多彩で程度もいろいろですが、意識障害、運動麻痺、感覚障害あるいは半盲、失語などの高次脳機能障害、頭痛や頭重感、ふらつきや失調症状、脳神経麻痺症状(物が二重に見える、顔面の麻痺やしびれ、物の飲み込みが悪いなど)が起こります。

したがって、神経症状の状況や発症部位から、どの血管が詰まったのかを推測することが可能です。例えば運動性片麻痺では、上肢に強い片麻痺であれば「中大脳動脈閉塞」を、下肢に強い片麻痺であれば「前大脳動脈閉塞」を、四肢麻痺や脳神経麻痺、意識障害であれば「脳底動脈閉塞」を推測します。また、ふらつき、めまい、失調症状などは小脳を栄養する動脈閉塞が推測されます。

まとめますと、脳梗塞では、主に以下のような症状が突然起こります。

半身が突然しびれたり、動かしにくくなったりする(半身の脱力感としびれ感)。

平らなところを歩いていて、足がもつれたり、つまずいたりする(平衡障害)。

目の前が急に真っ暗になったり、ぐるぐる回るようなめまいに襲われたりする。また、視界の一部が見えなくなったり、あるいは片側が全く見えなくなったりする(視野障害)。

急にろれつが回らなくなったり(構音障害)、言葉が出てこなかったりする(失語)などの言語障害を来す。

頭痛や頭重感:
くも膜下出血や脳出血などの出血性脳卒中に比べると軽いのは通例ですが、頭重感は多い。
ボーっとする(意識障害)。重症例では昏睡に陥ることもあります。

脳神経麻痺症状:
・ 物の飲み込みが悪くなる。食物や飲み物が口角からこぼれる。
・物が二重に見える。
・顔がしびれる。

身体の運動機能に障害が起こって麻痺を来すことが多いため、あっけなく寝たきりとなります。

通常、発作時に頭痛はない場合が多く(“痛くない脳卒中”)、意識を失うことはまれです。何回か発作を起こした場合、細い血管があちこちで詰まって小さな梗塞がたくさんできると、脳の働きが低下して、「血管性認知症」を起こすことがあります。ですから、症状や症状の出方には細心の注意をはらう必要があるのです。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法 』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。