第1部 捕獲具開発

3章 仕掛けとその効果

4 餌付け機能を備えた1匹取りの仕掛け

B 捕獲例2 クマネズミの場合

実施例1 古民家のケース

1月22日、目撃例のある建物外部の犬走りの部分にドブネズミ捕獲で用いた捕獲具を使ってテストを行うことにした、下に4箱上に3箱の合計7箱を2段に積み上げて設置し、餌付けから始めた(写真1)。

[写真1] ドブネズミ捕獲で用いた捕獲具を使ってのテスト

前回行ったドブネズミ捕獲では敷地が広く設置可能な場所が多かったが、例えば店舗内のような場合では設置できる場所が限られていて、一斉捕獲は難しくなる。そこで、1つの捕獲具で複数匹捕獲できる捕獲具を作って、それが可能かどうかを確認する必要があると思った。

今回、もう一回り大きい捕獲具を使用して、複数匹捕獲できるよう改良を加えた仕掛けを1台作った。入口を狭くした仕掛けの横に、一方通行の入り口をもう1つ設けたのだ。誘因効果を上げるため、奥にパンの小片をたくさん入れて、7箱とは少し離れた物置の入り口に設置して経過を観察した。

両方の場所で、入口のパンは食べるが中に入らない状態が一週間続いた。ドブネズミとは明らかに違っていると感じて、1月28日に、7箱の捕獲具に改良を加えた物を設置した。

クマネズミは足元が急に不安定になるのを嫌う。斜面を登った所に水平な板が有って、その板をわずか数ミリ押し下げるだけで、斜面が入口を閉じるように回転運動をするのだが、このわずか数ミリの変化を感知して嫌がるのかもしれないと思った。土を掘って地中に巣を作ることが多く、木に登る事もできないドブネズミとは大違いである。

プラスチックの板を細工して、斜面と水平な板の境界部分の上部約2㎝の所に踏み板を設けた。踏み板に前足を置き、水平な板に足を移動させても、体重が後ろ足に係っているので、水平な板は沈み込まない。足元が動かないことを確認したのち、ジャンプしてプラスチック板を乗り越える動作の最中に前足部分が数ミリ下がる。

2月6日、この工夫を加えたことで、7箱中3箱の中に入って食べていることが確認できた。さらに2月8日には、物置の前に設置した捕獲具でも中に入って食べていることが確認できた。こうして餌付けができたことになる。

ジャンプする行動の最中に数ミリ足元が下がるのは許せるのだろう。そして翌2月9日、物置入口に置いた奥行きの長い大きい捕獲具に1匹が捕獲されているのを確認した。

小さい個体だがかわいい目をしている。捕獲されたのに暴れるわけでもなく、前足を使ってパンを食べている(写真2)。初めてのクマネズミ捕獲である。

[写真2] 後で出て来る先住者の方のネズミ

改良を加えた7箱でもクマネズミが捕獲できる事が確認できれば上々だと考えて、犬走りに設置した7箱をロックモードに切り替えてその日は帰った。ハムスター用の大き目のケージを購入し、餌と水を用意して、かわいい目をした子ネズミをしばらく飼育する事にした。糞尿で汚されることを考えて新聞紙を入れてあったのだが、すぐにその下に潜り込んだ。

次の日、リフォームを行っている業者から捕まっているとの連絡があり、飛んで行って捕獲された1匹を会社に連れて帰った(写真3)。

[写真3] 後で出て来る侵入者の方のネズミ

この、後で捕獲した1匹をケージに入れる際にとても面白い事が観察された。次の記事がその時の観察記録である。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。