俳句・短歌 歴史・地理 歌集 古事記 2020.08.07 歌集「古事記物語・異聞」より三首 歌集 古事記物語・異聞 【第2回】 松下 正樹 私たちの太陽(アマテラス)はどこへ行ったのだ? 日本人の原像がまざまざとよみがえる。 日本最古の史書『古事記』に登場する神々の世界を詠う、他に類を見ない叙事的な歌集。叙情的な文語と明快な口語を絶妙に組み合わせながら、神々の悲哀と愛憎をつぶさに表現する。 日本の神々は、民と交わり、民とともに働き、人間同様死にゆく存在でもある。 王国の成立と興亡の歴史が秘められた『古事記』の世界を、人々の悲しみと喜びを歌で再現。日本人の原点の物語を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 やはらかな泥の海にも春なれば 葦のあを芽が噴きはじめたり 青葦の芽より生まれし女・男の神 伊耶那美・伊耶那岐が天にあらはる 神は沼矛を授け命じたり ただよふ泥をまとめ固めなさい *沼矛 王飾りのあるある矛(ほこ)
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『波』 【第5回】 内木 宏延 竜骨をも削れる切れ味の良い僕のナイフを持ったまま彼は彼女を追いかけた 「片足をこのレンガにかけて塀の向こうを見てごらん。あれがエルヴドンだ。ご婦人がひとり、長窓と長窓の間に腰掛けて書き物をしているよ。庭師たちが大きな箒(ほうき)で庭を掃いているぞ。ここに来たのは僕たちが初めてさ。僕たちは未知の国の発見者なんだ。動いちゃだめ。庭師に見つかったら打たれちゃうよ。イタチみたいに馬小屋の扉に釘付けにされちゃうぞ。ほら! 動いちゃだめ。塀のてっぺんのシダをしっかりとつかむん…