第1部 捕獲具開発

3章 仕掛けとその効果

4 餌付け機能を備えた1匹取りの仕掛け

A 捕獲例1 ドブネズミの場合

子がいつまでたっても独立しようとしないのなら、ドブネズミの世界では親は常に過保護だということになる。

大阪の繁華街では深夜に猫ほどの大きさのドブネズミが腹を揺すりながら我が物顔で通りを横切るそうである。天敵である猫を恐れないのだから人間など怖くない。これも、子に安全な場所を譲り、あえて危険地帯で餌を探す親の姿だと解釈すると微笑ましい。

パンだけ食べて捕獲できなかった捕獲具が4箱あった。そのうち3箱の中のパンはゼロになっていた。回収した捕獲具のうち、錆び始めている捕獲具が3分の1ほどあったので、清掃の時に流す海水によって錆が生じて、捕獲具がうまく作動しなかった事が原因と考えられる。

捕獲できなかったネズミがいるので、錆びていない捕獲具を選び数を減らして巣の近くに継続して設置すると、1週間ほどして1頭が死んだ状態で捕獲された。このネズミも体を丸くして座った状態で死んでいた。

多くの個体が捕獲されていなくなっているのに、捕獲具の危険性が全く認知されていない。親兄弟が行方不明となった異常事態なのに、それさえ分からない馬鹿な個体が残ったのであろうか?

餌付け期間が長い場合、捕獲具の危険性が認知されにくく、残った個体を捕獲することが容易であると考えた方が妥当だろう。そうすると、捕獲できずに残った個体がそんなに多くなかったことになる。

捕獲試験の期間を、調査期間も含めて約1カ月として許可を取っていたので、この時点で試験を終了した。その後ネズミはいなくなったとの事である。全ての個体を捕獲したとは思っていないが、この場所に生息するドブネズミのほとんどを捕獲できたと思っている。

予想以上に少ない結果となった。近接する建物から十分離れているので、捕獲された個体群は餌場を共有する1つの集団であるといえる。

毒餌を用いて駆除した場合ではすべての死体を集めて確認することはできない。今回使用したような捕獲具が今までになかったのだから、このような捕獲例の報告は初めてだと思っている。

この集団の構成から、親2頭と2~3回の出産で生まれた数匹の子からなる集団だと考えて良いと思っている。すると、ドブネズミは一夫一妻ということになり、共に店舗外の近い場所で捕獲されたのだから、親たちは一緒に行動していて仲が良かったのかもし れない。

後で触れることになるハツカネズミとは大違いである。

親子であることが証明されていないのだからそんなことはいえないだろうとどこかで声がするようだが、野生生物を観察する際にDNAの親子鑑定が重要だと主張する人はいない。

そして、長期にわたって野生家ネズミの行動観察を行うことは困難極まりない。このような捕獲具が今までになかったのだから、野外で行った世界初の観察例と言って良いだろう。

限られたエリアに生息する集団のほとんどを捕獲することができるのであれば、捕獲してその構成を調べることで集団の成り立ちを推測することは充分可能だと思っている。

クマネズミでも同じように餌付けをした後に、餌場を共有する集団をほとんど捕獲できるのであれば、これはすごいことになると思った。

大儲けに一歩近づいたという認識である。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。