流儀三 ネット集客を意識した戦略をもて

05 退去時にひと手間かけるだけで成約率アップに

ハウスクリーニングだけでいいか

大家さんがもっとも恐れるのは、空き室期間が長引くことだ。そのため、それまで入居していた人が退室すると、簡単なハウスクリーニングですませて、すぐにでも次の入居者に入ってほしいと思うものだ。

しかしよく考えてほしいのは、賃貸住宅の場合、リフォームしたり、設備の機能アップを行えるのは、それまでの賃借人が退室したタイミングしかないということだ。

その部屋の市場価値を下げないためには、リフォームや設備の機能アップは欠かせないが、それを実現できるのが、この退室のタイミングなのだ。

もちろん急な退室の場合、大掛かりなリフォームは難しい場合が多いのも事実だ。だが、退室時はハウスクリーニングだけにとどめず、できるだけひと手間かけるようにしたい。

簡単にできる水回りの機能アップ

前にも少し触れたが、浴室など水回りの機能アップは、かなり簡単にできる割には、効果が高い。

浴室が古くなってバスタブや壁部分の劣化が目立つような場合も、サーモスタット付きのシングルレバー水栓に交換しておくと、大家さんの心配りが感じられて、実際に部屋を見に来た入居希望者に好印象を与えることができる。予算や時間がないときは シャワーホースやシャワーヘッドを新品に交換するだけでも違うのだ。

これは時間もコストもかかるが、システムキッチンに交換するとDK部分の印象がガラリとかわり、リフォーム同然の効果があることも覚えておきたい。

もうひとつ水回りで簡単にできるのが、防かび・抗菌機能のある水回り専用フィルムをはることだが、これは次の項目でふれることにしよう。

壁の印象だけで成約率もアップ

入居者が退去したあと、壁紙が汚れている場合、張り替えはもちろん必要だが、ここでもちょっとひと手間かけると、成約率アップにつながるのだ。

賃貸住宅の場合、壁紙や壁クロスというと、どうしてもコストの安いオフホワイトやアイボリーの無地のものになりがちだ。張り替えを請け負う業者も、大量に仕入れて大量につかうと経済的なので、どの部屋も同じような印象になる。

そんな中で普通は使わないような色の壁紙を一部につかうというテクニックはすでに紹介した。壁の1面だけでも印象的な色づかいにすると、1DKや1LDKなど比較的狭い間取りの部屋では、インパクトが大きく、見違えるようになる。また、写真や図形をつかったデザインクロスをはるのもいい。

[写真1]壁の一面だけでも印象的な色使いにすると見違えるようになる

浴室やキッチン周辺など、水回りの壁には、防かび・抗菌機能をもったシートをはるのも効果がある。ダイノックシー トという水廻り専用シートがその典型だ。フィルム状のシートを貼るだけなので、退去時のように時間がないときも、短期間での施工が可能なので便利だ。色や模様もいろいろ選べる。古くなった浴室などにはると、好感度アップを狙える。

床材にもひと工夫してみると

賃貸住宅の機能アップ・グレードアップのアイディアは、分譲用のマンションや戸建て住宅を定期的に見ているとわいてくることが多い。

だから大家さん業をやるなら、ネットで新築マンションや戸建分譲住宅のホームページを見たりするのはもちろん、たまには住宅展示場などに足を運ぶのもいい。

新築マンションや新築の戸建住宅で一般的に なっている装備や機能は、価格もこなれてきている場合が多く、賃貸住宅にいちはやく取り入れると、好感度がアップする。

たとえばバルコニーの床面は、賃貸住宅ではコンクリートがむき出しの場合が多い。だが分譲用のマンションでは、ここに長尺シートをはることで、室内との一体感を演出している。

こうしたアイディアを取り入れると、あなたの賃貸住宅のグレードをワンランク アップさせる効果が期待できる。費用と時間はかかるが、室内の床や廊下部分も好感度アップを狙って、遮音性の高い床材にかえたり(L45フローリングの採用)、幅広クッションフロアーを採用するという方法もある。

間取りの変更は成約率アップの切り札

大家さんになったあなたを、これから悩ませるのは、やはり成約率の低下だ。ネットでみて入居希望者がやってきても、最終的に成約に至らないことが増えてくると、つい「家賃を下げるしかないか」と考えがち。

しかし繰り返し述べているように、それは最後の手段と考えるべきだ。家賃を下げるのであれば、その分を先につかって「家賃をさげない努力」をするのがいい。

その切り札となるのが、間取りの変更だ。オーソドックスな1DKをおもいきって広めのワンルームにしてみるとか、居室とDKやLDKのバランスをかえてみるなど、方法はいろいろある。

具体的には私のような工務店のおやじに相談してほしい。

周囲の環境がかわったり経済状況が変化すると、新築時には考えられなかったようなニーズが借りる側にでてくることがあり、そうしたニーズを先取りして、早めに対処することが、成約率のアップにつながるのだ。

一棟物件の大家さんだからできることがある

話題が「退去時のひと手間」から、少しはずれてきた気がするが、ついでだから書いてしまおう。それは、成約率アップのために一棟物件の大家さんだからできることがあるということだ。

たとえば外回りのリフォームがそれだ。前にも触れたが、マンション(区分所有建物)の専有部分だけの大家さんの場合、自分の好きなように手を入れられるのは、部屋の内部だけだ。通常、マンションの外装の補修工事は管理組合できめた計画に沿って行うが、どれくらいの頻度でおこなうかは、オーナーそれぞれで考えが違う。

賃貸だから外観はすこしぐらい汚くてもいいと考える人。きれいな方がいいが自分が住むのだから、ある程度汚くなっても我慢しようという人。あなたのように賃貸だからこそ、常にきれいにしておきたいと考える人ばかりではないのだ。

実際、このように意見がまとまらないまま外装のリフォームが遅れて、薄汚れたままになっているマンションは少なくない。

いくら部屋の中(専有部分)がリフォームされていても、外観から受ける「なんか汚い な」「こんなとこに住むのか」という第一印象は、なかなか拭えない。

「ペット可」「24時間ゴミ出し可」もOK

繰り返しになるが、専有部分だけの大家さんだと、このように自分の持ち物なのに、自分の好きなようにアイディアを試せない。ここが、私がマンション(区分所有建物)の専有部分だけの大家さんをおすすめしない理由だ。

あなたが一棟物件の大家さんであれば、塗装工事も好きなタイミングでできるし、いろいろなアイディアをすばやく実行できるのだ。

商売をやっている人なら、おわかりのように「いま」というときに、すばやくアイディアをいかせるかどうかで、もうけは決定的に違う。大家さん業にとってもスピーディな実行力はかかせない。

たとえばいま「ペット可」の賃貸住宅はどんどん増えている。また生活スタイルの多様化から「24時間ゴミ出し可」のニーズも高まっている。

しかしマンションの管理組合で、これらを実現しようとしたら管理組合での議論に膨大なエネルギーが必要だ。議論を繰り返した結果、仮にこれらが実現しても、そのときは成約率アップの切り札にはならなくなっているだろう。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『年収400万円でも大家になれる 工務店社長が教える5つの流儀』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。