島と大陸

正義感に燃える人々

とても大きくて円形の大陸がありました。その周りにはとても小さな島がたくさんありました。大陸には人が十億人以上住んでいて、その国の人たちはとても正義感に燃えていて、悪を絶対に許しませんでした。そして、この世で一番大切なものは「愛」だと信じており、団結や協力、助け合い、思いやり、友情、愛情、絆などの言葉は大好きでした。あと、おしゃれも好きで、大陸にいる人たちはみんな綺麗でした。島は自然が豊かで、島に住んでいる人は、大陸の周りにある島すべての人を合わせても百万人にも満たないのでした。その人たちは、わけのわからないことや矛盾していることばかり言い、空気を読むことができないのでした。島に住んでいる人たちは化粧やおしゃれは全くしないので、見栄えはせず、どちらかというと、ホームリーな人ばかり、つまり、みんな不細工でした。

素晴らしいタコ党

僕は大陸の北方に位置する、一番外側に住んでいて、二人の友人と一緒に、島へ行くか、それとも今まで通り頑張って少しでも大陸の中心に行くか悩んでいました。僕は美男だったけれど、正義感に欠けているので、そして、僕の友人たちは皆、不細工なので大陸の一番外側に住むことになってしまったのです。僕と友人のうちの一人はネコ党、もう一人の友人はイヌ党でした。イヌ党の友人はよく読書をする人で、ネコ党の僕たちとなぜか気が合うのでした。しかし、彼は絶対にネコ党にはなりませんでした。その頃大陸では、新しく生まれたタコ党が広がっていました。大陸の中心に連れて来られた島の人たちがどんどん彼らの島へ帰っていくのですが、その分だけ島から頭がいい人を連れて来るので、少しずつ大陸にムカデ党が増えてきたのです。ムカデ党の人たちが、自分たちの考えを認めてほしいと主張するので、イヌ党もムカデ党もネコ党も認めるタコ党が出てきたのです。タコ党はどんどん広がって、大陸に住む人の八億人以上がタコ党になりました。敵が欲しかったイヌ党の人たちはタコ党になって、なぜか満足しているようです。ネコ党の人はタコ党が広まってもうれしくありませんでした。ある日、大陸の中心に住んでいるタコ党の人が来て、イヌ党の友人がかわいそうだと思い、大陸の中心に連れて行ってくれました。その次の日、島に住んでい るネコ党の人が来て、僕とネコ党の友人を島に連れて行きました。

島に着くと僕はびっくりしました。島に住んでいる人たちは男も女もみんな、とても不細工だったのです。異常に鼻が大きかったり、目や口の位置がめちゃくちゃだったり、悪人のような顔付きの人ばかりでした。そして、その人たちは僕の顔を全く特徴のない、平凡な顔だと言いました。さらに彼らは変人で、ふざけたことばかりを真面目に話します。それに、誰かがどんな悪いことをしても、すべて許します。大陸にいて島に帰ってきた人たちが、大陸で殺人をしたことを話しても、 許してしまいます。僕はどんなことがあっても、殺人は絶対にいけないと思います。そんなに何でも許してしまう人たちなのに、僕が正しいことを教えることや、悪いことをした人に叱ることをすると、全く関係のない人が入ってきて、あまり自分の考えを他人に押し付けるなと言ってきます。ここの島には、偶然、ムカデ党の人は一人もいませんでした。

変人

僕は二か月くらい島に住みましたが、大陸に帰りたくなってきました。島に住んでいる人があまりにもおかしい人ばかりだし、大陸はタコ党の人が多くなっているので、いじめられることも少ないと思ったからです。それから一週間後に、大陸に帰ることを決めました。僕はネコ党の友人に一緒に大陸に帰ることを勧めましたが、彼はその話を断りました。大陸でタコ党が広がったので、大陸から島に行く人たちが少なくなり、島から大陸に行く人たちが少し増えて、島の人口はだんだん減っていたからです。しかし、僕が大陸に帰ることを誰も止めませんでした。

大陸

誰もいないところでもすごく緊張し、一分でも早く家に帰りたくなってきました。その日はなかなか眠れず、次の日は少し体調が悪くなりました。大陸の人たちは、僕に、とても親切にしてくれました。しかし、僕は特別扱いをされて、あまり嬉しくありませんでした。イヌ党の人が僕のことをちょっとからかうと、待っていたようにタコ党の人がすぐに来て必要以上にイヌ党の人を怒ります。するとそれを見たタコ党の人や、イヌ党の人までがたくさん来て一緒にイヌ党の人を怒ります。あまりにも必要以上に怒るので、それはまるでいじめのようにも見えました。イヌ党の人を怒っている人たちは、なぜかとても嬉しそうでした。そのうちに、みんなが僕のことを変人だと思っていることに気づきました。僕は大陸に来てからすぐに、島に帰りたくなってきました。結局、 大陸に来てから二週間もたたないうちに、僕は耐えられなくて島に帰りました。島に着いた瞬間、 また空気が変わったことを感じました。それからは島に住んでいる人たちのことを変人だとは一度も思いませんでした。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『令和晩年』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。