第1部 捕獲具開発

3章 仕掛けとその効果

3 シーソー板を内蔵した1匹取りの仕掛け​

沢山いるネズミを捕獲具だけで何とかしたいのなら、仕掛けがロックする時に音がしない工夫を考え出すことから始めなければならなかった。音がほとんどしない、少ない力で入口をロックする方法はいくつか浮かんだが、長いしっぽが邪魔になるので入口が完全に閉じるようにする工夫は難しかった。

そこで私が思いついたのは、ネズミがシーソー板を乗り越えて奥の餌を食べようとした時に、シーソー板が奥に傾斜して狭い入口を塞ぐ物だった。シーソー板をロックさせるための仕掛けとして、捕獲具の両サイドの金属板に穴を開け、内側に倒れ込む金属の小片を備え付けた。

その金属の小片には長さの違う2つの爪があって、それぞれが違う高さでシーソー板をロックさせる。つまり、1回目のロックではしっぽが外に出ていても捕獲できて、ネズミが振り返ってしっぽが抜けた後に2回目のロックで完全に出られなくする、長いしっぽが外に出ていても捕獲できるように2段階で入口を閉じる構造だ。充分知恵を絞ったつもりだが特許にはならなかった。

事情を説明し、許可を取って、大阪府民牧場でテストをした。ハツカネズミとドブネズミは生息しているが、クマネズミはいないようだった。動物に与えるための餌が入った袋がいくつも積み上げられている場所があって、ハツカネズミが袋をかじるとの事である。

設置した翌日には捕まっているという連絡があった。わずかな力でシーソー板が回転し仕掛けがロックするので、ハツカネズミのような軽い個体まで捕まえることが出来た。ハツカネズミがシーソー板を乗り越えたことは間違いないので、シーソーの動きを全く気にしていないことがわかる。大きい箱に小さいハツカネズミが1匹。

同じ場所で翌日にも捕獲できたことから、仕掛けがロックする時に音がほとんどしないために危険性が全く認識されていないことが分かる。ハツカネズミの捕獲を目的とした仕掛けではないので、次に、ドブネズミが出るというウサギ小屋でテストを行った。

ネズミが捕まったという連絡を受けて見に行くとドブネズミが捕獲されて中で死んでいた。ものすごい腐臭で、持ち返ったあとの箱の洗浄には閉口した。飼育員がウサギ小屋に入った時に、ドブネズミがあわてて捕獲具に入り捕獲できたので、ドブネズミがハツカネズミのようにシーソーの動きを気にしないかどうかは不明である。

しかし、長いしっぽがあっても2段階ロックの仕組みがうまく機能していることが確認できた。つまり、しっぽが外に出ていても1回目のロックで外に出られなくなったことが確認できた。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。