Ⅱ.これこそが慢性病の根本原因だ!

2 視点を変えると、見えてくるもの​

病死と殺人との共通点を手がかりとした慢性病の原因追求法

さて、慢性諸病の根本原因究明の手がかりの探究においては、以下に記すように考えていただくと、皆さんの理解がかなり容易になるのではと思います。

本論に入る前に、“病死”ではなく“殺人”あるいは、“事故死”や“自殺”について、改めて考えてみましょう。

もちろん、病死と殺人・事故死・自殺とは、それぞれが本質的に全く異なる性質の事象ですから、これらを一緒くたにして述べることはいささか乱暴な話であるのは間違いありません。

しかし、これらの各々の事象には、“死”という同一の帰結を迎えるという共通項が存在します。

つまり、病気による死と、殺人・事故死・自殺との間には、なんらかの共通点が存在するはずであり、その点を突き詰めて探究することを通じて得られるものを一つの手がかりとして、病気の根本原因解明の糸口を何かしら摑めるのではと私は考えたのです。

例えば殺人などの刑事事件では、数々の証拠を調べ上げることを通じて段々と容疑者を絞り込んでいき、その推理に論理的矛盾が皆無であることを繰り返し確認した後に、真犯人の逮捕に漕ぎつけることとなります。

その際、犯人の自白は決定的と言い得る証拠となるものですが、病気の原因解明に当たっては残念ながらこの手法をとることはもちろんできません。

もう一つ、その他の証拠として重要なものに「物的証拠(物証)」と呼ばれるものがあります。この物証としては様々なものが考えられますが、遺体検証を手がかりとした死因の究明からの凶器の特定は、中でも特に重要だとされています。また、犯行現場に残された遺留指紋は犯人特定の有力な手がかりとなるものです。

ちなみに、病死における病気発症時の様々な症状や各種組織に残る傷害痕や、その時点における検査データなどは、犯罪における遺留指紋に該当するものと見ることができます。

そこで、病気の根本原因解明に当たっては、それらの変化とその変化をもたらす原因との結び付きを、いささかの論理的矛盾を生じることなく明らかにできなければなりません。

また、犯罪の場合は、“犯人は犯行時に犯行現場に存在した者”というのが鉄則です。いわゆるこれは俗に“アリバイ”と呼ばれるものです。そして病死の場合の犯人も同様に、発症時に患部に存在したものである可能性が極めて高いと考えられます。

このように、刑事事件の場合の真犯人究明の手法と類似の手法を駆使して病気の根本原因解明を試みることは、原因未解明のままで長らく思考停滞状態に陥っているかのようにさえ見られかねない医学界の現状を打開する有力な方策になり得ると私は考えているのです。

そこで、医学に関する事項を述べるに当たって、このような具体的事例と対比する形で話を述べるほうが、医学に素人の人にも取っ付きが良く、また、興味が湧きやすく、さらには理解が容易となって、この問題に対する関心が遥かに高まるに違いないと考えたのです。

なお私は、何もただ読者の関心を惹くことだけを考えてこのような書き方をしているのではありません。

症状が軽いうちに治す努力をしたならば、多くの病気は極めて簡単に治癒します。そして今日、「予防医学」という言葉は非常に頻度高く見聞きされます。

しかし、それが現在あげ得ている成果は、残念ながらまだとても十分と言えるものではありません。私は、予防医学による成果は、いずれは現状の何倍、何十倍にもすることが可能だと確信しているのです。

なお、それを可能とするためには何が必要なのかと言いますと、病気の根本原因に関する正確な情報を、一般の人々も知るということこそが肝心なのです。

もちろん病気には様々なものがあります。したがって、医師でない者が広範な種類の病気の詳しい情報を習得するのは非常に難しいことです。

ただ、循環器系の諸発作は極めて莫大な数の人間の生命を奪い続けています。したがって、このような種類の病気の情報や知識は、人間が生きる上でぜひとも知っておくべき事柄だと私は考えているのです。

ことに、これから超高齢社会の本番を迎えるにあたっては、万人にとって必須の知識だと思われます。

※本記事は、2020年3月刊行の書籍『殺人うんこ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。