12月19日(土)

体重

今朝は目が覚めてみると6時45分であった。こんな時刻まで眠ったのは久しぶりである。

昨晩が遅かった。ポリープ切除あとの養生で酒が呑めない。必然、小用の要求が出なかったこともある。

酒さえ呑まなければ、夜中に起きることもないのである。しかしそのために酒を控える気はない。

下へ下りると台所に良子がいない。鍋をあけてみると常食のお粥が、食べられた形跡がない。

不安を感じた。間もなく良子は戻ってきた。元気がない。

「うんこは出た?」
「出そうで、出ない」

私はぞっとした。

「オナラは?」
「出る」

少し安心した。食べる量が少ないのだから、多少の滞りは仕方ないと思った。

「体重は少しは増えた?」

良子は首を振った。

「51キロのまま」

手術前は59㎏あった。8キロ減っていることになる(私は74㎏が71㎏になった。一時70.5㎏になった)。

「抗がん剤は」と良子が言った。

「やってみて副作用がひどかったら、やめるね」

私はそのことに反対しなかった。

「それで再発がなくなる訳でなし」と良子は言った。

ステージⅢBということは、がんの再発確率40%ということらしい。抗がん剤(化学治療)によって、その30~40%を防止できる、との説明を聞いた。つまり40%の再発確率が、28~24%に下がる、ということである。降水確率が40%から25%に下がったとして、雨は降るのか降らないのか。

「再発したら、もう手術はしない」と良子は言った。

「70年生きたから、満足やわ。お父さんがいろんなところへ連れて行ってくれたし。いい人生やった」

まだ傷跡が突っ張ると良子は話した。痛み止めを飲むほどではない。咳をしても響かなくなった。良くなっていることは間違いないが、やはりもう一つ違和感がある。

「寝ていると楽なんやけど」と良子は言った。そんな話をしているうちに良子は少し元気を恢復した。

「少し横になったら? ぼくはスダチを整理してくる」

裏の酢橘(スダチ)の木に、まだ相当量の実がついていた。今日はそれを整理し、ジャムにする予定だった。収穫を手に台所へ戻ると、良子は蜜柑を食べていた。田舎の嫂が送ってくれたもので、皮はやわらかく、果汁は豊かである。良子がものを食べるのを見て、私は少し安心した。

私はスダチを丁寧に洗った。この時期、7~8割は、小鳥がつついている。しかし大半は一口つついただけで、ジャムにするにはまったく支障なかった。

そのうち良子は席を外し、しばらくして戻ってきた。

「出た……」と良子は言った。先ほどまでとは表情が違っていた。私の心からも暗雲が去った。

あとは快活になった。「人生七十年」「明治時代は人生五十年」「満足々々」何て言っている。

※本記事は、2019年3月刊行の書籍『良子という女』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。