第1部 捕獲具開発

3章 仕掛けとその効果

2 ネズミに靴を履かせる作戦2

金属の箱は足から抜け落ちることがわかったので、薄いプラスチックフィルムに粘着剤を塗布し、脱げない靴下を履かせようとした。成功する前に商品名も浮かんだ。チュウソックスである。

下に落ち込むような空間を作り、上に粘着剤を塗布したプラスチックフィルムを置いた。厨房に出入りする穴の前に敷き並べて様子を見た。

翌朝点検すると、フィルムが十数枚なくなっていたが、周囲に数枚落ちていたのでしっかりと靴下を履かせることはできなかったことになる。フィルムが充分に薄ければ良かったのだが、粘着剤を塗布する作業がとてつもなく困難である。

その点検中に面白いことが起こった。テストをさせてもらうことを条件にある食堂で設置していたのだが、粘着シートも併用して設置していた。点検中、突然粘着シートにネズミがかかった音がしたので見に行くと、かかってすぐの状態を観察する事ができた。

しっぽは粘着シートからはみだし、体がシートの半分以上もある大きい個体が体を横にしたまま不自然な姿勢で、しっかりとシートに引っ付いている。バランスを崩して体の側面を勢いよくシートにぶつけたようである。

よく見るとシートの端に粘着剤を塗布した小さいプラスチックフィルムが貼りついていた。これが原因でバランスを崩したのだろう。

足にプラスチックフィルムを貼りつけたネズミがまだ、走り回っているかもしれないので、続けてテストを行うつもりで、後の策を練っていたところ、お客様から急にネズミがいなくなったのでもういいと連絡があった。実に歯切れの悪い終わり方だったが、後で思うと、ここにもヒントがあった。

粘着シートを併用して捕獲具のテストを行うことが多かったのだが、捕獲具のテストがうまくいかない場合でも、粘着シートに大きい個体が捕獲された場合には、それ以後ネズミが暴れなくなるという事である。

それ以降、確認のために置いた食パンの小片に喫食がないことで、集団が来なくなったのが確認される。何故だろう?

その時には不思議だとしか思っていなかったのだが、その後いくつもの観察を経て、家族揃って出て行った理由が分かって来た。そのことについて詳しく後述しているので記憶しておいて頂きたい。

仕事として粘着シートには子ネズミがかかる場合が多いので、この場合の大きい個体とは、めったに見ることのない、「うわ! でか!」と思わず声が出るような個体のことである。通常の業務で、捕獲した個体の体重と頭胴長を測定することなどないので、よく分らない表現になってしまって申し訳ない。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。