【第3章】賢い相続税の節税対策にはこんな知識が必要

「金融大工」誕生秘話

「はじめに」でも書きましたように、私の本職は大工です。

しかし、もともと大工になろうと思ってどこかで修業をした訳ではなく、ほとんど独学で大工の本業である家を建てるノウハウを身に付けました。

しかし、一通りの経験をして、「家を建てられます」と自信を持って言えるようになっても、すぐに仕事の注文が受けられた訳ではありませんでした。

はじめのうちは、いろいろと相談をされることはあっても、なかなか注文をしていただけるまでには至らず、苦しい時期を経験しました。

あるお客様からは、「土地が決まったら連絡するから待っててくれ」と言われ心待ちにしていたことがあります。しかし、しばらく経っても連絡がありません。

業を煮やして連絡してみると、土地の仲介をしてもらった不動産屋さんに、仲のいい住宅メーカーの営業マンを紹介され、「不動産屋さんの紹介なので、安くしますよ。取り急ぎ契約してください」と言われるまま契約してしまったというのです。

このお客様からは、しばらく経ってからまた連絡がありました。

どうやら、色々と希望していた通りに行かないし、「安くすると言われたが、思っていたほど安くならない」と困っている様子でした。

私に頼めばよかったと、そのお客様はおっしゃっていたのですが、契約した後では何もできません。お客様も残念がられていましたが、それ以上に残念だったのが私自身で、その時のお客様の言葉は今でも耳に残っています。

他にも相談を受けていたお客様が「銀行にいくら借りられるか、相談してみる」と言った後、音信不通になったこともありましたし、いくつも契約に進みそうになって、萎んでしまう経験をしました。

大工の技術を学んで、家を建てられるようになっても、家を建てる仕事はなかなかもらえないことを改めて思い知らされ、世の中は甘くないと実感しました。

言わずもがなですが、家を建てるためには土地が必要です。

もともと持っていなければ、改めて準備する必要があります。つまり、家を建てるためには不動産知識が不可欠です。

また、家を建てるためには少なからぬ資金が必要です。

現金でポイっと支払える富裕層ならいざ知らず、多く人の場合は銀行をはじめとした金融機関から借金をする必要が生じます。つまり、金融に関する知識も家を建てるのに必要なのです。

先に紹介した私が取り逃してしまったお客様達は、これら不動産の情報や金融の知識がなかったため、その道のプロに相談に行ってしまい、結果として私のもとを離れていってしまったのでした。

このことに気がついた私は、自分で家を建てて、家を建てるためにはどんな知識が必要なのか、勉強しようという考えに至りました。つまり、自らモルモットになる決意をしたのです。

まずはお金を借りるために、銀行まわりをすることにしました。

銀行まわりを始めてすぐに気がついたのですが、飛び込みで銀行に行っても、銀行員はあまり話を聞いてくれません。

それはそうです。「いくら借りられますか」と漠然と聞いても銀行員は、分かりませんとしか答えようがありません。情報が足りなすぎるのです。

人の紹介で行けば、ある程度話しを聞いてはくれますが、それだけではやはり聞きたい情報にはたどり着けません。

どの土地に、どのくらいの家を建てて、どのくらいの自己資金があって、どんな仕事をしていて、どのくらいの収入があって、などなど。銀行員が融資を審査するのに必要な情報を提供しなければ、いくら借り入れができるかは分からないのです。

世の中には、「土地があればお金を貸してもらえる」と信じてやまない人もいるようですが、担保があれば借り入れができる訳ではないのです。

このように、金融機関を巡るうちに、都市銀行、地方銀行、信用金庫など金融機関によっても、言うことに違いがあることが分かってきました。また同じ都市銀行や地方銀行でも、銀行によって評価の仕方が違うことも分かってきました。

ある銀行で3年分の確定申告がないとだめだと言われたかと思うと、2年でいいというところもありました。

他にも、夫婦共有名義でローンを組むこともでき、その場合は収入が合算されるので借り入れ金額を増やすことも可能だということも分かりました。

このようにだんだんと知識が増えるにつれて、自分は金融的にどのポジションにいて、どの銀行にどのような人物として借り入れの申し込みを行うのがベストなのかというのが、分かってきたのです。

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『「金融大工」が知っている 一番わかりやすい相続対策』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。