核心2

2 間口と高さの関係

間口が小さく高いほど引き抜きが大きくなる

次の図1を見比べてほしい。上の図はゴジラが押してもグッと耐える感じで、どっしりして地震が来てもビクともしない。下の図はゴジラが押したら倒れそうなイメージで、地震や強い風が吹いたら揺れそうに思える。

[図1]間口が狭く高さのある建物はコスト高になりやすい

建築の学校では木の枝を砂場に刺して、どのぐらい刺せば強度があって倒れないとか、倒れるとかで原理を学ぶ。

つまり階数を低くして間口を広くすることで安定性が生まれ、一方で間口が狭くて背丈が高い物件は、支点の力やモーメントの関係で、大幅な補強を地中に求める必要があるということだ。

間口が狭く高さがある物件ほど地中に埋める基礎が深くなり、建築の構造上は建物の高さが高くなればなるほどコストが掛かり、杭も重いものを使用するので経済的とはいえない。

大阪の一等地であれば高層ビルを建てるメリットもあるが、それは大手に任せればいい。間口が広く高さを抑えた建物は、どっしり構えて建築コストはそこそこ、間口が狭くて高い建物は、引き抜きやモーメントの影響があるのでコスト高になる。

土地の価格と建設コスト、両面を考えて慎重に行動する必要がある。

間口の狭い土地は安いが……

土地の価格は間口が広い土地が100万円とすると、間口が狭い土地は「8掛け」で80万円。

間口の狭い土地に建てたマンションやビルは耐震構造などにお金をかけている物件といえるので建物自体の評価は高くなる。銀行も同様の評価となるので、中古物件であれば間口が狭い土地を選ぶ選択肢もある。

ただし、30年後、50年後に解体する時は階数のある物件ほど費用が掛かる。マンションを子供に譲ろうと考えている人は、将来、多額の解体費用が必要になるということにもなりかねないので、その辺の考慮も重要だ。

中古物件は間口が狭くて高さがある建物よりも、間口の広くてどっしりした物件を買う方が賢明な判断だ。

北向きの土地は間口が小さい方を選ぶ

間口で影の長さが変わる。間口が広い建物の方が影の影響が大きく、その影は奥まで伸びている。

また、間口の狭い方は影が短い(図2)。太陽に背を向けて、間口が広い方が影をいっぱい落として、狭い方が落とさないというのが原則の考え方だ。

[図2]間口が狭いため影が短くなる北向きの土地が狙い目

間口が広い土地は車のショールームなど商売に適した物件で、間口の狭い土地は自社所有ビルなどの建設に適している。もちろん前記した通り土地の値段も違う。

間口はそこそこ狭くてもいいという考え方で、北向きなら間口の狭い土地が狙い目だ。

不動産会社なんかは何の根拠も示さないで「間口がいい」、「広い」などと物件を勧めて来るが、結局、容積率を消化できなくて高い土地を買わされただけというケースもある。

これから土地を買おうと考えている人は、そうした視点にも目を向ける必要がある。

目先と発想を変える

「せっかく間口の広い土地を買ったのに7階までしか建てることができない」といった相談や問い合わせが結構ある。

次の図3のようなケースでは「建物を半分にして建設してはどうか」とアドバイスしている。

[図3]間口を狭くすれば影の問題はクリア

要は、間口を狭くすれば影の問題はクリアできるので、間口の広い土地いっぱいに一棟建てるのではなく、二棟並びで建てるのだ。例えば間口の広い土地で7階が限度となったら、間口を狭くして10階建てマンションを二棟建設する。

土地選びやマンション建設では柔軟な発想と、目先や視点を変えることも、成功する賃貸業を目指す上では重要なポイントといえる。