第3章 ストレスは、たぶんあなた自身が作り出している

①30歳にとってのストレスの正体​

事例2.)あれっ! 声が出ない! 博士論文最終審査会の直前に声を失う大失態

プレゼンテーションや挨拶など人前で話をすることは、緊張してドキドキするという人は多いと思います。同様に、私も緊張はしますが、大学教員という職業柄でしょうか、人前で話すことは、あまり負担に感じる方ではないと自分では思っています。

ところが、大学院に在籍中の時でした、あり得ない事態が私を襲いました。私は、心理学を学ぶために会社を辞め大学に編入学したことは、お話しした通りです。

その後、さらに研究を続けるために大学院博士課程へ進学しました。大学院も最終学年になり、修了と同時に博士号の学位を取得するためには、大学に博士論文を提出し、教授陣や多くのギャラリーを前にした発表審査会といわれる口頭試問に合格しなければなりません。

研究発表の時間は1時間。その後、どのような質問が飛んでくるかまったく想定できない質疑応答があります。準備には数週間を費やしました。

忙しい日々を送っていた、発表審査会の3日くらい前の日のことだったと思います。あれっ、声が出ない! 何の前触れもなく、私は、突然、声を失いました。

その日の午前中は、いつも通り90分の講義をしています。風邪を引いていたわけでもありません。ところが、午後になって、声の出し方を忘れた、という表現を理解して頂けるかどうか分かりませんが、とにかく、いくら声を発しようとしても、声にはならず息がもれる音しかしません。

声って、本当に、出なくなるんだ。想定外の出来事に、まるで他人ごとのように感じました。

審査会は、大学院での最後で最大のイベントです。平静を装っていましたが、自分で感じていた以上の緊張感と、上手くやり遂げたいというプレッシャーを、知らず知らずにつくってしまっていたのかもしれません。

3日間では、声は、もとのように出るようにはなりませんでした。ハスキーボイスくらいまでには回復してくれたので、審査会はなんとか発表することはできましたが、大切な日に、大失態をやらかして、指導教員はあきれ顔でした。

皮肉にも、私の博士論文は、「職業性ストレスに対する対処と精神的健康に関する研究」という題目です。往々にして心理学の研究者が、自分の苦手分野を研究テーマに選ぶことは、よくあることだということを、後になって指導教員から聞かされて知りました。笑い話ではすまされません。

※本記事は、2020年3月刊行の書籍『Over Thirty クライシス』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。