流儀二 大家さん業は誰でも「ウサギとカメ」と知れ

02 けっして家賃で飯を食わないこと

家賃は自分の生活につかってはいけない

繰り返しになるが、私は現在20棟の賃貸物件を所有しており、そこから毎月2000万円の家賃収入がある。そして毎月1800万円を越える額を銀行などの金融機関に返済している。残りのお金は私が所有する賃貸物件の維持管理や古くなった物件のリノベーションなどにつかっている。

もちろん物件ごとにみていけば、投資した分をすでに回収して利益をとりにいっている物件もあるし、まだ建てたばかりで金融機関への金利分も払えていないし募集などに経費のかかった物件もある。このように新旧の物件でお金の出入りのバランスをとりながら、トータルで若干の利益が出るようにしていくのが大家さんの腕の見せどころだ。ただ私の場合、こうした利益は1円たりとも私的な生活には使っていない。私は大阪府の堺市で工務店を経営しており、自分の生活はすべて工務店からの給料でまかなっているのだ。

大家さん業は副業と考える

私にとって本業は「工務店のおやじ」であり、何十人もいる社員の生活を守っていくのが最優先である。「大家さん」は、どこまでいっても副業という位置付けである。ここは大家さんになりたいという人に、ぜひとも知っておいてほしい。

「家賃で飯をくうな。きちんとした本業をもて」

これが大家さんとして自分に科しているオキテのひとつである。私は最初のマンションでこそ、家賃で自分のためにクルマを買ったが、それ以降は、このオキテを愚直に守ってきた。大家さんとして成功するために、これは重要なポイントだ。本業があればピンチに強いこう書くと「大家さんというのも、りっぱな仕事ではないか」といった声が聞こえてきそうだ。

もちろん私は大家さんという職業にケチをつけるつもりは毛頭ない。ここで私が強調したいのは、せっかくサラリーマンという立派な仕事をもっているのだから、その仕事をおろそかにしない方がいいということだ。私はいままで、工務店のおやじの立場から、あるいは同じ大家さんという同業者の立場から、多くの大家さんをみてきた。その結果、わかったことは、本業をもっている大家さんは、ピンチに強いということだ。

ここ30年ぐらいを振り返ってみても日本経済は何度も危機に遭遇している。その度に計画通りに家賃が入ってこなかったりして、多くの大家さんが崖っぷちに立たされた。そこから立ち上がっていまも大家さんを続けている人は、やはり本業をもっている場合が多いのである。「次の1棟」の声にも気を引き締めて経済状況の変化で、賃貸住宅の需要が減ったり、家賃相場が下がったりして、一時的に大家さん業が厳しい状態になっても、本業で食っていけるなら何とか切り抜けられる場合
が少なくない。

しかし、全部ではなくても家賃収入の一部を生活費などにあてていれば、たちまち行き詰まってしまう。こうした最悪の場合を想定して、とくに大家さん業をはじめたばかりのころは、いくら順調に家賃が入ってきても、自分の生活は本業でまかなえるレベルにしておくことが肝心だ。

最初に購入した一棟物件が満室になり、順調に家賃収入が上がってくると、計画に沿って「次の1棟」という話がでてくるはずだ。私の経験からいえば、そのあたりが一番危ないので、もう一度ふんどしを締め直したい。

いくらもうかっても自分の「エンゲル係数」を上げないこと

これまで、大家さん業を手広くやっていながら、途中で失敗し、破産したり行方しれずになった人を私はたくさんみてきた。その結果、つき合いのある人なら「これは、ちょっとヤバイな」「そろそろとぶかな」などと判断がつくようになってきた。

どこでわかるかといえば、まず洋服や靴、時計など身につけるものの質がハンパなく上がり、とても普通の金銭感覚ではないなと思えるようになることでわかる。また三度の食事も、私なら接待などで月に一度いけるかどうかの高級店に毎日のように通っているという噂がどこからともなく聞こえてくるのだ。そして大阪ならミナミの高級クラブの上客として通い詰める。クルマも高級イタリア車をとっかえひっかえするようになる。

こうした生活が可能になるのは、自分の所有する賃貸住宅からの家賃を自分の私生活の質を上げるためにつかっているからだ。またクルマなど大きな買い物をするときは手持ちの賃貸住宅を売ってそのおカネをあてるようになる。大家さん業は繰り返し述べてきたように堅実にやれば、いまの時代、そんなに簡単に大きな失敗はしない。しかしこんなふうに浪費をして自分の私生活の「エンゲル係数」をどこまでもあげていけば、すぐに破綻はやってくる。

私も一度は破滅の瀬戸際までいった

かくいう私も一度破滅の瀬戸際までいったことがある。お恥ずかしい話なので詳細に触れるのは勘弁していただくが、だから私生活のエンゲル係数をあげまくって、最終的に破産してしまった多くの大家さん=不動産投資家の気持ちはよくわかるのだ。

私の場合、月に2000万円の家賃収入がある。もちろんそのうち1800万円は銀行への借入金返済に回すわけだが、それでも計算上は毎月200万円が残る。それは自分の持っている賃貸住宅の機能アップやリフォーム、また次の目標への投資にあてるべきだと書いたが、それを実行するのは、そんなに簡単ではない。それに自分が好きに使うことのできないおカネが銀行口座を右から左へ通過していくのをみているうちに、自分はいったい何をしているのかと、ふと考える瞬間がある。そんな瞬間にこそ、破滅への入り口が口をあけて待っているのだ。

大家さんは孤独な職業である。「今月だけ」「来月には穴埋めする」とか自分にいい訳しながら家賃を私的につかっても、だれも文句をいう人はいないのだ。たぶんこの本を読んでいるあなたも、大家さんとして成功したら一度は私のように破滅寸前の体験をするはずだ。これは人間である以上避けられないというのが私の結論だ。

クルマはベンツかポルシェまでとすること

私が繰り返し「本業をもて」「大家さんは、あくまで副業に」と書くのはそのためだ。私も恥ずかしながら破滅寸前までいったが、そこから引き返してこれたのは本業があったおかげだ。だから私はそれ以来、より厳しく自分を律していかないといけないと考えた。

たとえばクルマだ。私もクルマは好きだが、フェラーリやマセラッティ、ランボルギーニなど、イタリア製の高級スポーツカーには乗らないことにしている。多くの大家さんたちが、こうしたイタリア製高級スポーツカーに買い換えてすぐに破滅していったからだ。私はプライベートではあえて新車には乗らず、中古のメルセデスのSLを何台か乗り継いでいる。

また仕事場へいくときは「工務店のおやじ」らしく、トヨタの1000cc・パッソを愛用している。最終的にはポルシェの911に乗りたいというのが私の夢だ。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『年収400万円でも大家になれる 工務店社長が教える5つの流儀』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。