第一章 嫁姑奮戦記

翌日はまたおむつに手を突っ込み大騒ぎ、本人は自分の汚い手を平気で眺めている。

晩になるとがぜん元気になり、手すりを持って起き上がりベッドから降りようとする。

手すりは紐でしっかり結んであるが、夜にはそれを解こうと必死だ。

これで脚が自由に動けるようになったら、もうお手上げだ。全く皮肉な話だが。

術後四日頃から車椅子が使用出来るようになり、リハビリも始まる。

昼間は車椅子に座らせ、廊下、ロビー、屋上庭園などに連れて行き、なるべく眠らせないようにするが、思惑通りにはいかず眠ってばかり。いつになったら夜眠れるようになるのやら。

この頃からまたご近所の方たちがぼつぼつお見舞いに来てくださる。いつものように丁寧にお礼を言い、相手に合わせて話している。

昼と夜ではまるでジキル博士とハイド氏だ。あまりにも妄想がひどく眠らないので、精神科の診察を受ける。睡眠薬をいただくが、たまに朝まで眠ることもあるし、朝から眠ることも、全く一日中眠らないこともある。

先生もこの一定しない薬の効果に戸惑っておられ、私たち家族もこれにはずっと悩まされる。

脚の回復は順調にいっているようだ。ただ勝手に動き回らないように一層の注意が必要になってくる。

三週目には尿管も取れ、車椅子トイレも使用出来るようになり、夜間はポータブルトイレを部屋に置き使用する。

姑は初めて使う温水洗浄便座のことが理解出来ず、どこ押したらおしっこが出るのと言って私をギョッとさせる。

日中はそれからもずっと寝させないように車椅子で屋上や病棟内を連れ回る。四方にあるロビーから一円を見渡すことが出来、あれが通天閣よあれが大阪城よとか話しかけて過ごす。屋上庭園は園芸ボランティアの人たちによって季節の花が植えられ、花好きな私たちの心を和ませてくれる。

睡眠不足は相変わらずだが、週末二日は夫が看てくれ、間の二日は娘が代わってくれるので本当に助かった。

四週目になってから胃痛を訴える。頭もぼーっとするので常用の胃薬と鎮痛剤を買って来てくれと言う。両方とも持って来ていたが勝手にはあげられないので、看護婦さんに相談する。やはり医師の診断がいるので駄目だと言われる。

リハビリを終え部屋に戻るとすぐ部長回診がある。沢山の先生方が来られ緊張したせいか吐き気を訴え吐く。ちょうど来合わせた看護婦さんもびっくりして介抱されるがまたも吐く。

※本記事は、2018年1月刊行の書籍『嫁姑奮戦記』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。