第1部 捕獲具開発

1章 はじめに

捕獲具を使ってネズミを捕獲しようとする場合、仕掛けに対してネズミがどのような行動をとるかを知ることはとても重要である。例えば昔から使用されている捕獲具に、つるしてある餌に触れるとバネの力で入り口が閉じる仕掛けのものがあるが、仕掛けの構造はシンプルこの上ない。そして、ネズミ捕りと言えばこの仕掛けしか思い浮かばないほど古くから使われてきた。

この仕掛けは、とても強力なバネで入口が一瞬にして閉じるので、俊敏なネズミはもちろん、その他の生き物を捕らえる仕掛けとしても申し分ない。しかし、閉じる際にとても大きな音がする。この大きい音がする事が問題なのである。

性悪なネズミが1匹だけの場合はこれで十分だが、仲間が近くにいた場合には学習されてしまうため、同じ場所でこの仕掛けは二度と使えない。その周辺にいた沢山のネズミたちが大きな音を耳にし、仲間が捕らえられる光景を目にすることになるからである。沢山のネズミが棲みついているのなら、たとえ運よく1匹捕獲できたとしても、この道具だけでネズミを退治することは不可能だと言うことだ。

アライグマのような外来生物の場合も、駆除しなければならないと法律で定められているのだが、集団で行動しているなら、同じ理由でバネを用いて駆除するには限界がある。捕獲具の危険性が近くにいた多くの個体に認知され、結果として捕獲できない個体が一気に増えてしまうからだ。捕獲対象が集団で行動していて、そのほとんどを捕獲し駆除しなければならない場合には、バネを使った仕掛けは全く役立たずの道具と言って良い。