寝静まったころに頭の上で走り回っているのだから気になって仕方がない。高いところに登るのが得意で、電線を渡って移動することができる。

実際、侵入経路が分からない場合に電線を引き込む軒先を調べてみて見つかったことがある。それほど身軽であり、まさに鼠小僧と言える、俊敏で神出鬼没なネズミの方がクマネズミだ。

今、クマネズミは都市部で勢力を拡大している。いわゆるネズミ取りのカゴが売れなくなったのも、人口が集中する都市部でクマネズミが増加したことが原因と考えられる。

目障りなネズミを捕獲することができないのなら、大きな籠は商品として失格だ。そのことが徐々に分かってきたのだから、売れなくなるのも当たり前だろう。

しかし、見た目ではほとんど区別できない2種類のネズミが身近な所に住んでいて、ドブネズミは捕獲できるがクマネズミは捕獲しにくいのは何故だろう。これは大きな謎である。クマネズミとドブネズミでは餌の取り方、あるいは仕掛けに対する行動に相違があると考えられるが、この謎が不明なまま放置されているのだから、ネズミの習性に関して、人間がいかに無関心であるかが分かる。