第3章 AI INFLUENCE

第5項 決定

1 絞る→決めるへ

人々に検索は浸透していく。

検索する商品の対象は当初は本とCDくらいだったものが、再生音楽・活字製本の枠を超えて物質的商品群になり、選択の対象は物質から方法にも拡がり、更には商品のみならず人間と人間の関係にまで及んだ。

個々の商品の発見の手助けに留まらず、例えば人々の関心ジャンルの1つとして、ファッションをコーディネイトするアプリも現れた。

将棋でも、“詰め将棋”や“手筋“といった部分的な局面の勉強から入り、ひいては“次の一手”など全体の駒の配置、つまりは個々の局地戦の相関関係を考察し次の手を考案するようになる。そうなれば(アマチュアの)初段はゆうにあろう。

検索システムもその域に入った。

こうなれば、次の流れは自ずと見えてくる。有段者が棋譜という一局の将棋全体を眺めるが如し。人生のコーディネイトだ。

ファッション・コーディネイトの概ねの原理はおそらくこうだろう。

靴という商品の買い物を、服とパンツと靴と帽子とサングラスといったファッショングッズの括(くく)りに拡張する。靴・服等々の個々の商品を分子化し、分子の構成要素において共通キーワードを多く含むものを結び付ければよい。

或いは、過去のデータも活用するなら、ある服を買った人の中で多く買われた靴を結び付けてもよい。コーディネイト利用者の数が増えれば、コーディネイトの評価を集計化し、関連性において評判の良いものを残す。

ファッションには全体の色の配置など応用要素もあるが、評判の良い関連性のパターンを学習し(赤×黄色は昨年からウケがよい等)、次の結び付けのやり方も改善する。コーディネイトは利用者が増えるほどに洗練されていく。

念のため強調すれば、逐ちく一いちデザイナーが事前に着合わせのパターンを入力しなくても、人工知能は着合わせの提案を行えるという点に新規性がある。将棋の新手がソフトの示した一手から発掘されたように、今までになかった目を引くコーディネイトが誕生する可能性は大いにあろう。

受験生は受験する学校もコーディネイトされるだろう。

模試の結果から、偏差値、その人の得意分野・不得意分野と大学の出題傾向の相性で判断し、「一般の評価×合格率」の最も期待値の高い学校を選択してくれる。受験日程や受験料予算を入力すれば、リスク分散投資の要領で全滅を防ぎつつも高めも狙い、その年の受験シーズンのスケジュールも戦略的に組んでくれる。

ファッション・コーディネイトが出来れば、次はファッションとレジャーを結び付けることも出来よう。このようなファッションを好む人は、その格好をしてこの遊戯施設に、この飲食店に、或いはこのバーに行くのが相応しかろうと余暇の楽しみ方もコーディネイトする。

服装と行き先の施設を分子化し、コストや文化的傾向や場所等からマッチングする。

この新しい世話焼きは、昔からいる世話好きの職場の先輩などよりは遥かに気が利くに違いない。親切心に似た自負心と先入観がなく、基礎データの量が圧倒的に多いのだから。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『人間を見つめる希望のAI論』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。