【第2章】相続税の節税対策の王道、不動産投資

一応知っておこう! 不動産投資のリスク

先ほど土地は更地のまま相続するより、賃貸物件を立てて相続した方が、相続税の節税になるという説明をしました。相続税の節税になるのは確かですが、下手をすると資産そのものを減らしてしまうリスクもあるので注意が必要です。

特に賃貸物件に投資をする場合は、以下のようなリスクがあるので留意しておいてください。

① 空室リスク

賃貸物件は、部屋を借りる人の家賃が収入になります。当然ですが、借りる人がいなければ、計画通りの収入を得ることはできません。

現金で投資した場合は収入が減るだけなのでまだましですが、ローンを組んで返済をしている場合、返済額が収入を上回ってしまうケースもあり得ます。そうなると資産そのものが減ってしまうので、本末転倒です。

空室リスクは場所を問わず、どこでも発生する可能性がありますが、特に、人口が減っている地域では、リスクは一段と高くなるのは明白でしょう。また、周辺住民のニーズに合わない物件を建ててしまうと、入居人が集まらずに空室が生じるリスクが高くなります。

例えば、ファミリー層が周辺人口のメインなのにもかかわらず、学生向けのワンルームなどを作っても借り手が見つかりにくそうなのは、誰の目にも明らかでしょう。一時期、都内の大学がこぞって郊外に移転し、移転地の近くでは学生の向けの賃貸物件が多数作られたことがありました。しかし、昨今の少子化で郊外のキャンパスを都心部に回帰させる大学が相次ぎ、アパートのオーナーが悲鳴を上げているという話をよく耳にします。

先々のことを予見することは誰にもできませんが、よほどのことがない限り、入居人になりうる人口が大きく減少しない立地以外では、常に空室リスクとの背中合わせなのは避けられません。そもそも「更地だと相続税が高くなる」という理由だけで、賃貸需要の有無を確認しないで賃貸物件を建てるのは、大変危険なので注意が必要です。

② 金利変動のリスク

相続税の節税対策として不動産投資を行う場合、ローンを組んだ方が節税効果は高くなることは、すでに説明した通りです。このような投資用の不動産ローンは変動金利が設定されていることが多いので、金利上昇時には返済額が上昇してしまうリスクがあります。

日本はいま、ゼロ金利なので金利上昇のリスクに対しては、鈍感になってしまっている人が多いのですが、先々金利が上がる可能性はいくらでもあります。例えば、1億円の20年ローンを組んだ場合、金利が1%上昇すると、返済額が1000万円以上増える計算になります。もちろんその分資産が目減りするので、節税効果が大きく損なわれる結果になることもありうるのです。

③ 火災のリスク

賃貸物件では部分的に可燃性の材料を使って建物を建てるので、常に火災が起きる危険を孕んでいます。落雷や放火、隣接地からのもらい火など、いろいろなことが原因で火災は発生します。また、人となりのよく分からない他人を、入居人として住まわせるのが、賃貸住宅です。

入居者の中には、信じられないほど注意力が散漫な人が紛れ込んで、火災を起こしてしまう人もいないとは言えないのです。もちろん保険に入っておけば、損害に対しての賠償金は支払われますが、一旦火災が起きるとさまざまな厄介ごとを抱えることになるので、心痛も相当なものになります。

このように賃貸物件への投資にはリスクがつきものなのは、よく理解しておいてほしいと思います。相続税の節税対策として魅力的ではありますが、このようなリスクもつきものなので、賃貸物件への投資を行う前には、資産運用の観点で信頼できるプロのアドバイスを受けるべきでしょう。

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『「金融大工」が知っている 一番わかりやすい相続対策』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。