核心2

1 ようかん型と全戸角部屋

主流は「ようかん型」、これからは「全戸角部屋」

アパートやマンションの構造は、廊下などの通路に面して部屋が「ようかん型」に並んでいる物件がほとんどだ。しかし、私の考えるプランはこうだ。

アパートやマンションの中心部にコア(核)となる部分を設けて、そこに階段や通路などの供用スペースを配置して四方に部屋を散らす設計だ。こうすると物件は「全戸角部屋」になる。

「ようかん型」は採光を取るために南側にベランダを持ってくるので「部屋が明るい」という特徴がある。工務店にとっては安価でつくりやすいなどのメリットがある「ようかん型」だが、長い目で見ると、大家の手取りに違いが出てくる。

写真を拡大 [図1] 「ようかん型」と「全戸角部屋」

全戸角部屋のメリット

「ようかん型」の物件は、階段や通路などの共用部が外に出ているので、階段や通路などが常に雨風にさらされ、劣化や汚れの原因をつくっている。塗装などは、通路に屋根がないだけで5年と持たないということが私の経験上いえる。

建築基準法や民法上で、抗菌と塗装の保障があるのはたった2年だけ。それ以降は有償となるため、大家の負担が増える。

これに対し「全戸角部屋」は、共用部が建物の内部にあるため劣化はしにくい。家賃の下落も抑えることができるということだ。

ただ、現実は「ようかん型」に比べると「全戸角部屋」の方が建築費が高いのも事実で、建築構造も複雑になるため、特に大手ハウスメーカーは安くて建てやすい「ようかん型」タイプを選ぶ傾向にある。それでも、数年後に無駄な修理や出費が出ないことを考えると、土地の価格も一緒で建物の平米数も一緒であれば、「全戸角部屋」の選択をした方が私はいいと思う。

主流は「全戸角部屋」物件に

安くて建築しやすい「ようかん型」は、ハウスメーカーにとっては理想の賃貸物件として全国で広がってきた。今も街を歩けばベランダが横一列に並ぶアパートを目にすることが多いと思う。

しかし、部屋を借りる側にとってはどうだろう? 「ようかん型」の部屋のつくりは、どれもほぼ一緒で個性なんてない。設計の仕事としても魅力が少ないのではないか。

こうした疑問を感じて生み出したのが「全戸角部屋」だ。中心に玄関を持ってくることで、住居者に安心と高級感が生まれ、図2のように、個性的で魅力あるプランや設計が何よりのメリットだと考えている。

実は最近、私の考えるプランのような全戸角部屋を建てる物件が増えている。中には「真似をされていますよ」なんて言ってくれる人もいるが、魅力ある物件に一人でも多くの人が住めるようになるのであれば、私は構わないと思っている。

写真を拡大 [図2] 個性的で魅力あるプランや設計
※本記事は、2019年8月刊行の書籍『大家業は寝ててもチャリンチャリン 工務店社長が教える4つの核心』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。