【前回の記事を読む】「足がなくて、義足なんだ」の告白に…拍子抜けした相手の言葉…

第2章 二人の出会い

義足と言えなかった思い

テニスの相手をしてもらったことがよほど嬉しかったのか、俺が所属するアンプティサッカーチームの練習を見に行くと言いはじめた。見学のつもりで参加していた彼女は、サッカーをする格好ではなかったが、コーチから、

「サッカー一緒にやる?」

「中学校の遊びでしかやったことないんですけど、大丈夫ですかね?」

と、次の瞬間には、柔軟体操をはじめていた。

初めて見学に来た日、誰よりも本気でサッカーボールを追いかけ、誰よりもゴールを狙うアスリートだった。まさかの三得点もあげて、

「よっしゃ!」

とガッツポーズをした。その姿を見たチーム全員が何者!? と思ったのは言うまでもない。

よく話を聞けば、軟式テニスも中学時代は県ランキングを持ち、フリースタイルスキーモーグル競技では、国体で入賞し、そのときの優勝者が上村愛子選手だったことが本人にとって一番の自慢だという。

それから彼女といろんなスポーツを一緒に経験し、アスリートとしての感性が似たもの同士だとわかった。そして存在が当たり前になり始めた頃、俺から付き合おうと告白した。今思えば、俺は直感で恋に落ちていたんだろう。この人を逃したらいけない! アスリートの直感だったんだなって思う。