遠い夢の向こうのママ 毒親の虐待と夫のDVを越えて

お母さんは洋裁も編み物も料理もとても上手だった。昼下がりのゆっくりした時間は、お母さんは洋服を縫ったり、編み物をしたりしていた。

家にいることが多かった私はいつも本を読んでいた。家には絵本が沢山あった。まだ幼稚園にも行ってないからひらがなも読めないけど、一文字ずつお母さんに「これはなんて読むの?」と何度も何度も聞きながら、少しずつひらがなを覚えて絵本くらいなら読めるようになっていった。絵本はとても楽しかった。想像の世界に入れた。

10歳上の典子姉ちゃんはとっても頭が良く成績も良かった。大人しく、銀縁の眼鏡をかけた、絵に描いたような優等生だった。お姉ちゃんも本が好きで、お姉ちゃんの部屋には本棚があり、本が沢山並んでいた。私はいつの日かその本を読めるようになることを楽しみにしながら絵本を読んでいた。

「学校に行って漢字が読めるようになったらあの本を全部読もう」

そう思ってわくわくしていた。

夕方近くになったら、お母さんは夕ごはんの支度を始める。もやしのひげを取ったり、簡単なことくらいなら私も手伝っていた。お母さんが作るのは、大皿料理だった。

夕ごはんは5時からと決まっていた。おじいちゃんやおばあちゃんのために早い時間のごはんにしているようだった。

ごはんの時間になると、テーブルを出して、テーブルクロスを敷いて、みんなのお箸を並べて、ごはん茶碗や湯呑を並べて、取り皿を出して、という一連の作業もちゃんとできた。

夕ごはんはみんなで食べるけど、テレビのチャンネル権はおじいちゃんにあった。必ず、ニュースか相撲だった。つまらなかった。他のチャンネルならアニメとか放送してるのに。

文句を言うといつも怒られた。おじいちゃんか、お父さんが絶対だった。私の家は、色んなルールがあって、全てにおいて厳しかった。