第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ-4 技術と法

コラム⑥

事故は一瞬かく言う私も自動車事故を体験したことがあります。学生を後部座席に3人乗せ、助手席には外国人教員Sさんを乗せて、その日の実験をした暗い帰り道を走っていました。

「今日はいいデータが取れたね」とうきうきした話をしていたのですが、私の助手席に座っていたSさんが右のほうを見て、目をむく様子が伝わりました。その直後、私の前を白い車が右から左へ横切りました。ブレーキを踏む時間はありませんでした。

そのままドーンとぶつかって、2台の車がちょうど45度方向へ、そして田んぼのなかへ突入しました。田んぼのなかで車が止まり(レバーはドライブにささったまま)、外に飛び出すと、頭から血を流した高齢の女性が立っていました。すぐに救急車を呼びました。

事故の原因は、相手の車が一時停止を無視して交差点に進入してきたことなのですが、私もそれに気がつかなかったのは運転が未熟だったと思っています。事故が起こった瞬間は気が動転し、頭のなかでいろいろなことを想起するのですが、迅速で適切な対応を取ることが難しいものです。運転手としては、こういった事態に直面したときに、何をすべきなのか、心得ておくことも大事なことだと感じます。

幸いこの事故は双方の車の全損事故だけで済んだのですが、まさに事故は一瞬です。「自動運転」ではどうなるでしょうか。もし先方の車が「自動運転」の車で、ドライバーが停止しようとしなくても強制的に停止させるシステムだったら事故は防げたでしょう。

しかし、「自動運転」よりもドライバーの意思を優先するシステムだったら、同じ事故が起こったでしょう。もし先方の車は「自動運転」でなく、私の車のほうが「自動運転」だった場合、交差点に近づいてきて、一時停止なのに減速しない車に気がつくことができると思いますが、事前にこちらを停止させて衝突を回避するのは相当に難しいと思います。

また、こちらの車が「自動運転」によって減速しても、逆に当たり所が悪ければ、今回のようにたまたま双方にけがが生じない衝突に抑えることができるかどうかはわからないでしょう。そう考えると、双方の車が完全な「自動運転」でなければ、まずはドライバーがしっかりした注意を払うことが第一であり、ドライバーが判断を間違えたときは強制的に「自動運転」が働くというのが現実的でしょうか。

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。