【前回の記事を読む】いよいよ添乗!留学生の帰国、テキパキと仕事を進めていく

がんばれ、新人添乗員

初めての添乗

少し休憩したあと、二階のレストランに向かう。カギを提示したら案内してくれることになっているが、添乗員は入り口で皆が来るのを待つのが常識。人より早く来て、遅く帰る、早く起きて遅く寝るという毎日がこれから二週間続くのである。

十分前になると、何人かがレストラン前にやってきた。

「そろそろ入ってもよろしいでしょうか」

「はい大丈夫ですよ、カギを見せてからね」

「分かりました」

六時過ぎには全員が集まり、予定通り夕食が始まった。真知子と松井も皆と共に席に着いた。一応コースメニューであるので、料理は順に運ばれてくる。今日のメインメニューはチキンのグリルだ。サイドメニューもどっさりあり、皆、満足そうである。デザートになった頃、全員に、食事のあと、八時に隣の集会室に集まるように告げる。

夕食後、集会室で翌日の予定を説明する。

「明日は、七時から八時の間に夕食と同じ二階のレストランで朝食を取ってください。バイキングですので、食べすぎないよう注意してくださいね。それから、朝食に来る前に、スーツケースはカギをかけて部屋の外に出しておいてください。ボーイが取りに来てロビーに運びますから」

「質問よいですか」

「はいどうぞ」

「もしスーツケース出し忘れたらどうなりますか」

「その場合は、自分でロビーまで降ろすことになります。それから、自分のスーツケースがあるのを確認してからバスに乗ってくださいね。もしなかったら部屋の前に残っている可能性がありますので、ボーイに取りに行かせますから」

「分かりました。忘れないようにします」

「では、十一時まではこの部屋を使えますので自由に歓談ください。もうおなかがいっぱいだとは思いますが、あちらに飲み物とクッキーが置いてありますので、ご自由に召し上がってください。なお、私も松井もここにおりますので、質問等がありましたらいつでも伺います。早く部屋に帰って寝たい方はもちろんお部屋に行っていただいて結構ですよ」

ほとんどのメンバーは、飲み物片手に話が弾んでいたが、一時間ほどたつと、三々五々部屋に戻っていった。

別ルートの谷山たちは、明日、カリフォルニア州でホームステイした学生を連れて、シカゴに来ることになっている。こちらも、明日の午前中の便でダラス空港からシカゴに向かい、ヒルトンホテルで合流だ。アメリカ旅行はそこから約二週間。シカゴ、ナイアガラ、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントン、ロサンジェルス、そして最後はハワイをめぐる。

日本は国内での時差がないが、アメリカは東西で五時間ほどの時差がある広い国だ。サンフランシスコやロサンジェルスに代表される開放的な西海岸もいいが、アメリカ各地の主要な都市を回るのは多民族国家の現状や歴史風土の違いなどを知る貴重な機会である。訪問先の中でもフィラデルフィアは、アメリカ合衆国誕生の地であり、真知子のお気に入りの場所の一つである。

真知子は、ガイドブックを手に取りながら、前回訪れたときのことを懐かしく思い出していた。