「投資マンションを販売する私たちのビジネスにとって、それを継続的に、販路拡大を図っていくことを前提とするなら、ただ売ればいい、と言うだけでは長続きはしません」

「私たちの会社は100棟まで造り販売していきます。このことで収益を上げていきます」

「その後、100棟目が完成した後は、その管理で会社としての収益を確保していきます。私たちのような投資マンションデベロッパーにとって大切なのは、資産価値の高い物件を造ることと共に、いかに管理を徹底し、資産価値を落とさないか、これが重要になってきます」

「そのために私たちの会社は、“建設”“管理”“売買”を、それぞれ別会社として運営しています。仮に“造る”部門が傾いたとしても、“管理”の部門は、確実に残れる仕組みを作り上げています。現在、既に87棟を建設し、この全てを(株)B管理という別会社が運営しています」

「私が提案させていただいている『家賃保証』は、私の会社が行うのでなく、別会社が行うことになります。管理は好不況の影響を受けることがないため、物件がある限りは、確実な収益を上げることができます。ですから、その点は安心していただいてよいかと思います」

父はその説明を聞き、大きくうなずいていた。私も、改めて聞く彼の話に深く納得していた。そして彼の説明を聞き終えた後、父は言った。

「感心させられた」

村上氏と私を見ながら言葉を続けた。

「あとは、お前が契約するかしないか、決断するだけだな。彼の話の中に嘘はないと思う」

そしてこの日から数日後、再び村上氏と会い、契約を交わした。過去に家を建てる際、同じようにハウスメーカーの営業担当者と向き合い、今回の、この時よりも大きな金額の契約書に押印した。

しかし、何故か今回のこの時の契約書への押印の方がはるかに緊張した。将来、利益を生み出し、資産になると確信したにもかかわらず、である。1600万円余りの借り入れ。つまりは借金である。押印しつつ身震いしたことを、今も思い出すことができる。

第8話 投資マンション経営がつなぐ様々な出会い 

さて、投資マンションを所有し既に15年が過ぎた。1つ目を購入し1年が過ぎた頃、更にもう1つ物件を購入し、計2つのオーナーとなった。そして妻も物件を購入した。夫婦で3つの物件を所有していることになる。

村上氏とは、契約後も度々会い、様々な話をした。お互いに夢を語り、意気投合し美味しくお酒を呑むことも度々あった。ファイナンシャルプランナーの資格を持っていることで、いろいろな相談にものってもらった。ある時、生命保険のプラン変更への考え方を尋ねた際には、「私のお客さまで、若くして生命保険会社の支店長をしている方がいます。いつかご紹介させていただきたいと思っていた方です」

「直接その方に相談されると良いかと思います」

「必ず気が合われることと思いますよ」

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