運命の出会い

しばらく待っていると、青に赤の縞のセールの圭が、飛ぶように滑走してこちらの砂浜に向かってくる。千佳はすぐさま海の家の二階から駆け下りていき、圭と一緒にボードを砂浜の上まで運ぶ。ボードを運び終えると、千佳は自分のナップサックからタオルを取り出して投げつける。圭はそれを受け取って首に巻きながら、大きな声で言う。

「沖はとてもいい風が吹いていたよ。今日はもう海を上がるぞ」

二人はウインドサーフィンの道具一式を、車輪の付いた大きな専用キャリアーに積み込んで、国道134号線の下をくぐり抜ける道に向かって歩いていく。その狭い道に入っていく手前で、千佳は気になっている米兵達が遊んでいた河口の方向を見るが、先ほど見かけたサングラスをしたワンピース姿の女は見えなくなっている。

二人が国道の下をくぐり抜けると、すぐ先に圭が道具を預けている店が見えてくる。圭はそこに道具一式を預け、シャワーを借りて浴びるため店の中に入っていった。圭がジーパンと白いTシャツ一枚に着替えて、店の外に出てくる。

「千佳、明日から俺は出張でアメリカだ。俺はこれから帰って旅行の準備だ。ここに預けたウインドサーフィンの道具は、いつでも千佳が借りられるよう店のオーナーに伝えておいたよ」

ヘルメットをした圭はそう言ってサングラスをかけ、愛車ドゥカティの大型バイクにまたがる。この店の駐車場は片側一車線の国道134号線に直接面しており、圭のバイクはそのまま店の駐車場を出て右折し、渋滞している車列の横をすり抜けるようにして江の島方面に走っていった。

大磯から横須賀まで海岸線を通る国道134号線は、湘南のメインストリートと呼ばれている。その道路沿いにはお洒落なレストランが並び、海の見えるリゾート風マンションも数多く建っている。年間二千万人の観光客がやってくる古都鎌倉もある。そのため、季節が良くなってくるこれからの時期は、車が渋滞して、車で通り抜けようとすると時間がかかってしまう。