第1章  令和の今、行政改革最高のチャンス

医療、介護分野

今、政府は全世帯型社会保障ということを頻りに言い出した。つまり老人重視から現役世代、将来の子供達にも考慮するという意味である。ゴールドプランばかりでエンゼルプランには全くお金を注ぎ込まず、次世代には生まれた瞬間から一人当たり700万円余の借金を背負わせるという有様に少しメスを入れ始めたのである。外科医として手遅れ感は否めないが内科的な処方箋を見てみたいものである。

平成9年に介護保険法が成立した当時、現役世代の支える人と主として老人の支えられる人の割合は10対1の胴上げ型と言われた。数年前に3人で1人を支える騎馬戦型になり、今は1対1の肩車型に近付いている。このままの少子化が進めば1人で1人以上を背負う時代が来るかもと危惧している。

医療保険と公的負担医療とを合わせた平成28年度の概算医療費が前年度より14年振りに減少に転じた。これは高額薬剤オプジーボの値下げや肝炎治療の成功で治療が一段落し肝炎患者の減少などのためである。

統計ミスの多い厚労省にとってはミス以上の想定外の筈である。今後医療費は下がり始める可能性もあり、画期的、エポックメイキングな変化点、ターニングポイントだったのかも知れない。

例えば後で詳しく述べるACP(Advance Care Planning:先日「人生会議」と呼称が決まった人生最終段階での医療や臨終をどうするかの自己決定の事前通知)がより進めば、甚大なコスト削減とマンパワー、スペースを割いて本当に助けるべき人の受け入れを断らざるを得ない救命救急センターや救急隊の救急救命士の業務改善や救命率の向上に繋がり、医療費は下がってQOL(Quality Of Life:生活の質)やQALY(Quality Adjusted Life Years : 質調整生存年[注])は上がると予想する。

注:「質調整生存年」とはQOLスコア×生存年数

前にも述べたが日本の医療制度は大変素晴らしく、「いつでも、どこでも、誰でも、何回でも」ほぼ平等で、ほぼ正確な医療を安価に受けることができる。この国民皆保険制度は和食より先に世界文化遺産にとずっと思ってきた。

中国やロシアは共産主義だが医療は行き届かず、米国は命と健康は金次第であるのはマイケル・ムーア監督の映画「シッコ」でご存じであろう。キューバの制度が日本に最も近いが、医療の水準が低い。あの唯一無比無双の国民皆保険が維持出来たのは奇跡的な幸運と国民の心構えのお陰だと思っている。

まず第1に右肩上がりの経済成長によりこの制度を支える方達の保険料がアップ、第2として国は日米安全保障条約の傘の下で防衛費も少なくて済み社会保障にお金が廻せ、更には3つ目に明治以来の武士道的精神の徳育が守られていたからであった。これは医療を提供する側と受ける側の双方に言えることである。

まず開業医も病院長も医療で儲けようという考えは持たなかった。また患者も謙抑的で無茶を言ったりしなかったのである。しかし今、この3つが全て失われてしまった。

経済は失われた20年、リーマンショック以後は特に停滞。保険料の支払えない無保険者までが増えている。防衛費は中国の覇権主義やロシアの極東展開強化、何と言っても最悪は北朝鮮の核クラブ入りとミサイル完成で、それらに対抗するために増加の一途である。

国民の気質も変わってしまい、クレーマーやモンスターペイシェントの増加、救急車をタクシー代わりに利用したりと目に余る状況である。医師も赤ひげ大賞で表彰が必要なほど地域医療に従事する者が減ってしまい、都会の9時~5時のビル診療のローリスク・ハイリターンの診療科に著しく偏在している。地方ではお産も出来ず、子供がひきつけを起こしても救急車で遠くまで行かねばならず、ハイリスク・ローリターンの周産期、小児医療は崩壊している地域もかなりある。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『令和の改新 日本列島再輝論』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。